更新日時:2025.02.28
7人で走り勝った“伝説のゲーム”の美談と現実と、狩野新監督の懺悔「どう戦うか、迷いはあった」【F1第26節|記者会見/大分vs仙台】
PHOTO BY本田好伸
【Fリーグ】バサジィ大分 2-1 ヴォスクオーレ仙台(2月15日/パークアリーナ小牧)
2月15日、パークアリーナ小牧にてFリーグ2024-2025 ディビジョン1の第26節が行われ、バサジィ大分とヴォスクオーレ仙台が対戦。大分が2-1で勝利を収めた。
前日のY.S.C.C.横浜戦は、GKの登録が2人、FPの登録が6人、この試合は、FPがさらに離脱して登録メンバー7人で戦うことになった。今シーズン、主力選手が次々に負傷離脱したチーム事情を象徴するようなメンバー構成であり、ベンチで交代できる選手は実質1人という状況のなか、仙台を走力で上回る戦いを見せた。
前日の横浜戦で2得点を挙げた奥直仁が14分に先制し、22分には陣川凌も2試合連続弾でリード。仙台の追撃を1失点で振り切り今シーズンのリーグ戦ラストマッチを戦い抜いた。試合後、「さあ行こうぜ胸を張って オレンジの勇者たち」と掲げられたスタンドの前で選手が挨拶すると、駆けつけたサポーターは涙を流して彼らを称えた。
満身創痍の激闘を終えた直後、狩野新監督が思わず「伝説のゲームだった」と語るほどに熱量と想いのあふれた試合を、指揮官とキャプテンはどう振り返ったのか。監督と齋藤日向が記者会見で想いを口にした。
怪我人が続いた責任を感じている
●バサジィ大分|狩野新監督
──今日の試合を振り返って。
結果として勝てたことがうれしくて、少ない人数ですけど今まで積み重ねてきた集大成を出せたところがあります。正直、この一週間は生きた心地がしなかったので(試合が終わって)ある意味ホッとしています。
振り返ると、怪我人を出してしまったことにはすごく責任を感じています。選手たちはプレー面でもそうですけど、1年間の感謝しかありません。本当に素晴らしいゲームだったと思います。
──FPが5人というなかでどんな想定、プランで臨んだのでしょうか?
(14日のY.S.C.C.横浜とは)相手が異なりますし、戦術も変えないといけないなかでしたけど、時間を使うこと、GKを使うこと。選手には、できるだけ一人でも長い時間ピッチに立ってもらうことを考えていました。
そのなかで、相手の守備の形や、プレスのタイミングは前日の横浜と似ているところがありました。そこはスカウティングでどっちの足からプレスがかかってくるかなどもわかっていましたし、選手も理解をしていました。
横浜よりも少しアグレッシブさがなかったことを考えると、自分たちがうまくボールを保持しながらフィニッシュまでいけたと思います。戦い方としては時間を使いながらいかにシュートまでいけるかだけにフォーカスしていました。まずは本当に5人でどうやって戦うのか。それこそ最初からパワープレーすることも考えました。
でも、替えの選手がいないんですよ(苦笑)。休ませることができないので、ボールを保持しながら休めるかなど、選手の体力面については、今まで(トレーニングで)山を走ったりとか、データなども見ました。何分で走れる選手だから、これくらいであれば長く出場できるなと考慮しましたけど、迷いはありました。
なので、基本的には昨日の試合と攻撃の戦略などはそこまで変えないで、マインドのところで、「勝ち」が大前提であるなかでしっかりやっていこうと話して臨みました。
──人数が少ない状況を知っている方にとっても、「頑張っている」だけではなく勝利を届けられました。サポーターさんがスタンドであれだけ涙を流してくれるほどに「オレンジの勇者たち」の名に恥ない戦いでした。ファン・サポーターに向かって最後に挨拶をした際の気持ちをお聞かせください。
熱い思いというか、選手が並んでいる後ろからサポーターを見ていたなかで、苦しいシーズンにさせてしまったことが自分の中ではありました。自分が改善しないといけないと思います。
それは指導者としてもそうですし、選手の人生に関わってくるものですから、もう少し働きやすい環境、もう少し楽にプレーさせてあげて、そのなかで勝利をサポーターにプレゼントすることが自分の仕事だと振り返って思います。
そこは今後に生かしたいという思いしかありません。
今、怪我をしているメンバーで言えば、仁部屋(和弘)とか、(橋本)澪良とか、来シーズンのことはわからないですけど、そういった選手が戻ってくれば簡単に負けるチームではないと思っていますし、本当に、来シーズンは上位リーグに必ず食い込んでいくチームを見せないといけないと思っています。
その思いが強くなりました。サポーターのみなさんにはそこで恩返ししたいと思います。
──監督も試合後に思わず「伝説のゲームだった」と話していました。胸が熱くなる試合だったことは間違いない一方で、大前提としてGKを含め7人で戦わざるを得なかったチーム事情があります。今シーズンは怪我が重なってしまいました。どうして怪我人が増えてしまったのでしょうか。
プロスポーツの世界では新しい選手、スタッフが入ってくるなかでバランスを考えるものです。自分が監督をしていて、それがうまくできていなかったと思います。選手、スタッフ、全体ですね。舵を取る人間としてそのマネジメントがうまくできていなかった。それはコミュニケーションであったり、いろんなことがあります。
トレーニングのセッションも含め、蓄積疲労が多いと怪我にもつながりますから、そういった部分で怪我が増えたことは間違いないと思います。ピッチでも強度の高いアグレッシブなプレーを目指しているので、トレーニングの強度と試合の強度とで違いが出てしまうと怪我にもつながってきます。
新天地で活躍しようと入ってくる選手、それこそ(齋藤)日向も最初に怪我をしましたけど、力が入りすぎてトレーニングの量が増えてしまうことなども含めて自分たちスタッフがコントロールできれば、もう少しいい状態でシーズンを戦えたのかなと思っています。
──人数が少ないことによる練習への影響もありますか?
トレーニングの強度もなかなか上げられないので、非常に苦しいシーズンではありましたけど、自分としては試行錯誤しながらうまく回せるようにメニューを組みましたが改善点はたくさんあります。練習強度が落ちると、試合での怪我人も増えてしまいますから、そこが低くなってしまったのは事実です。
ただ、この試合については、やはり「伝説の試合」だったんじゃないかなと思います。
勝たないと意味がないとみんなに伝えた
●バサジィ大分|齋藤日向
──試合を振り返って。
振り返りとは少し違うのですが、ゲームの前にみんなに話をさせてもらいました。今まで人数が少ないなかで、いい試合ができたり、粘り強い試合ができたことで、みなさんに感動してもらったり、次も頑張れという声をかけてもらったりしました。見に来てもらっている方にはそうかもしれないですけど、実際に結果を見ただけでは、自分たちの状況がどうとかはわからないと思います。結局は負けていて、順位も悪いことしか見えていないはずです。
みなさんに証明するには、やはり勝たないと意味がないということをみんなに伝えました。その言葉がみんなのプレーにどう影響したかはわからないですけど、今、置かれている自分たちの状況を改めて認識したなかで、最後にしっかりと、ギリギリでしたけど勝って、対戦相手やこちらの人数に関係なく、自分たちは結果を出せるんだということをみなさんに見せられたことが一番、自分自身はうれしいですし、そう感じる選手も多いと思います。
ゲームの振り返りというよりかは、そういうプロセスがあったなかで今日の試合を戦っていました。
──人数が少ない状況を知っている方にとっても、「頑張っている」だけではなく勝利を届けられました。サポーターさんがスタンドであれだけ涙を流してくれるほどに「オレンジの勇者たち」の名に恥ない戦いでした。ファン・サポーターに向かって最後に挨拶をした際の気持ちをお聞かせください。
大前提として、自分たちの仕事は「リーグで結果を出す」「トーナメントで結果を出す」ことと、「見にきてくれる方に喜んでもらうこと」という、2つの側面があると個人的には思っています。
ゲームに勝ったとしても、汚いプレーをして勝っていくことが正しいとは思わないですし、だからと言って、負け続けているチームが喜んでもらえるわけでもないと思っています。
2つを追い求めるなかで、ファン・サポーターの方には、時間とお金を使ってこの場所に来てもらっていますから、まずは「勝つこと」を見せないといけない。そのうえで、いいドリブルをしたり、いいディフェンスをしたり、心が動くようなプレーをそれぞれが出すことが自分たちの仕事だと思っています。
今までは結果が出なくて、それでも自分たちがあきらめない姿や前に進む姿をとおして心を少し動かすことができたかもしれないですけど、やはり結果です。自分たちが求めていた2つのことを今日は達成できたと思います。
これから先、全日本選手権を含め、1試合でも多く、もちろん選手権はトーナメントなので負けてしまえばそこで終わりなんですけど、それを今シーズンだけではなく、来シーズンも両方を追い求めて、結果と、見に来てくれる人に喜んでもらうこと、そんなフットサルを自分としても体現していきたいと思います。
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