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作成日時:2025.10.19
更新日時:2025.10.19

高橋健介監督が流した涙。「勝たせてあげたかった」立場を超えた盟友“吉川智貴”への想い【日本代表】

PHOTO BY伊藤千梅

10月19日、北里アリーナ富士。世界王者ブラジル代表との激闘を終えた記者会見で、高橋健介監督は突如、涙をこらえながら言葉を詰まらせた。

吉川智貴について聞かれた時だった。今シーズン限りでの現役引退を表明している36歳のレジェンドは、この代表戦が、国内で戦う最後の試合となる。

指揮官は「勝たせてあげたかった」と絞り出すように語った。勝敗を超えた絆と、そこに込められた覚悟。その涙には、長年日本代表を支え続けた男への深い敬意と痛切な思いがにじんでいた。

文=北健一郎

<国際親善試合vsブラジル代表・メンバーはこちら>



背負いすぎた男への、指揮官の涙

試合後、ピッチで吉川と何を話していたのかという質問が飛んだ時だった。

「日本でやれる最後の試合ですから……勝たせてあげたいなという……」

一瞬、黙り込み、俯いた後に絞り出した声は震えていた。

勝利で送り出すことは叶わなかった。それでも、満員の観客の前で懸命に走り続けた吉川の姿を前に、指揮官の感情は抑えきれなかった。

名古屋オーシャンズでも、日本代表でもキャプテンとして長年、日本フットサル界をけん引してきた吉川。2024年のアジアカップでグループステージ敗退を喫し、ワールドカップ出場を逃した際には「自分はここにいるべき選手ではない」と、責任を一身に背負い込んだ。

その姿を間近で見ていたのが、当時コーチを務めていた高橋だった。

「本当に、背負わなくていいものまでいっぱい背負ってきていますから……。それを自分も一緒に経験して、サポートしきれなかったなと思っています」

その言葉には、敗戦の悔しさと同時に、吉川を思う深い後悔と敬意がにじんでいた。

今回の代表活動で、高橋監督は吉川を“サプライズ招集”した。

それは単なる功労者への花道ではなく、“もう一度ともに戦いたい”という純粋な願いだったのだろう。指揮官は語る。

「そんなに背負い込みすぎなくてもよいのにというなかで、ここに来てプレーしてくれたこと。それに値するパフォーマンスをしてくれたこと。だから、歴史を変えるような1勝をあげたかったなという思いです」

3点のビハインドから2点を返し、最後まで諦めなかった日本代表。そのなかで、吉川は攻守両面でチームを鼓舞し続けた。ピッチの外でも若手を導き、象徴としての責任を背負っていた。だが、勝利という形で報いることはできなかった。

それでも高橋は「結果を超えた価値がそこにあった」と信じている。

「これが国内での最後の試合になるのはわかっていました。勝てなかったですけど、その価値は十二分に示していましたし、みなさんが見えていない部分でも、本当に大きなものを残してくれたと思います」

“見えないもの”を残すということ。日本代表が今後進む道において、吉川のような存在は“技術”や“戦術”を超えた価値をもつだろう。それは「諦めない」「規律を持つ」「背負う覚悟」──高橋監督が代表チームの哲学として掲げている信念と重なっている。

36歳にしてなお、若手の見本であり続けたキャプテン。そして、同じ敗北を経験しながら共に立ち上がろうとする新任監督。

2人を結ぶのは“結果では語れない信頼”だった。

この日の涙は、単なる惜別の涙ではない。

日本フットサルの過去と未来をつなぐ、“継承”の涙だった。

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