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【女子Fプレーオフ準決勝】平均年齢32.9歳のベテラン軍団・さいたまサイコロは、なぜ絶体絶命の状況から這い上がれたのか?

PHOTO BY軍記ひろし

完璧な意思統一を可能にした“合言葉”とは?

小野直樹監督の言葉がピンチを救った

気持ちでひっくり返した―――。一言で表すならまさにそんな展開だった。エース筏井の活躍は確かに鮮烈だったが、それと同時に印象的だったのがチーム全員のひた向きさだ。苦しい状況でも誰一人として下を向かず、互いに声を掛け合い、全員が勝負を捨てていなかった。

そして何よりも特筆すべきは、この大一番でチームとしての意思統一が完璧になされていたことだろう。3点を追う中で、どのように攻め、どのように守るのか。攻守両面で戦い方がしっかりと統一されており、全員が最後まで落ち着いてプレーしているのが印象的だった。

プレーオフ準決勝の土壇場、しかもビハインドの中でチームとして足並みを揃え冷静に戦うのは簡単なことではない。時間の経過とともに焦りも増す中、統制が取れなくなり、不協和音を重ねるうちにモチベーションまで落としてしまう。

それは男子のFリーグでもよくあることだ。それにも関わらず、追い掛けている時間帯も、逆転した後もサイコロの選手たちは実に落ち着いていた。「その時やるべきことをきちんとやる」スタイルで最後まで冷静に試合を運んでみせたのだ。

ただ単に「経験豊富な選手が多かった」というだけでは、大舞台であれほどの一糸乱れぬ統率は実現しない。怪我で離脱中の主将・高橋彩子と副将・堀田えり子に代わりこのプレーオフでキャプテンマークを巻いている吉川紗代にその秘訣を聞いた。

日本代表としても活躍したキャプテンの吉川紗代

「小野監督からは、試合中の色んな状況に合わせた“プレーの選び方”について繰り返し言われてきました。勝っているのか負けているのか、前のゾーンなのか、真ん中のゾーンなのか、それとも後ろのゾーンなのか。それに合わせてどういうプレー選択をするのかという部分ですね。監督はそれを“振る舞い”って言うんですけど、時間帯、点差、場所などを考えた上で、各自がどういう振る舞いをするかということについては口酸っぱく言われてきて。チームとしてかなり意識することができるようになった部分だと思います」

小野監督が浸透させた「振る舞い」という合言葉によって、サイコロの選手たちの状況判断能力は着実に進化していた。ビハインドの中でもしっかりと状況を整理し、「今必要なプレーは何か」を各自が考え、責任を持って遂行した。逆転した後も浮足立つことなく、相手の守備組織の外側で上手くボールを回して時間を使うなど試合巧者振りを発揮したが、それは上記した積み重ねがあってこそ可能になったのだ。

いよいよ明日、サイコロはプレーオフ決勝でリーグ1位のアルコイリス神戸に挑む。リーグ戦無敗の強豪だが、勢いに乗るサイコロにも勝機はあるはずだ。

「負けていても苦しい展開になっても、やれることを一つずつやっていけば逆転できるというのをこの準決勝で証明できたので。神戸さんは本当に強い相手ですけどビビらずに、最後までチーム全員で頑張りたいと思います」(吉川)

泣いても笑ってもいよいよ今季最後の2試合。どんな展開になっても、サイコロらしい粘りのフットサルを貫きたいところだ。

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