更新日時:2019.09.28
【キタケンレポート】日本のピヴォ当てがタイに通用しなかった理由。キーワードは「3人目の動き」と「長いボール」。
PHOTO BY軍記ひろし
ピヴォ当ては戦術的には間違っていないが……
タイ代表との第1戦は、一言で言えば「残念な試合」だった。
「相手の勢いに押されて、受け身になって、それから立ち直れなかった」(加藤未渚実)
キックオフと同時にタイはハイプレスをかけてきた。それに対し、日本の選手は底辺で失うミスを何度かしてしまう。星翔太、仁部屋和弘、吉川智貴、皆本晃のスタートのセットには、ベテランらしい落ち着きを見せてほしかった。
1失点目は左のコーナーキックから、ファーにいた選手にダイレクトボレーで打たれている。日本はYの字のゾーンで守っていて、ファーへのボールには外側の選手が寄せる約束事になっていたと思う。ただ、ファーの選手のポジションは右のライン際で、かなり距離があった。あの位置からダイレクトで打って決めるのは簡単ではない。
先制したことで、タイは立ち上がりのように高い位置からプレスをかけず、ディフェンスをハーフから押し上げる時間帯が増える。それによって日本はボールを相手陣内に運びやすくなった。ただ、タイが自陣に引いたことで、攻撃のためのスペースが狭くなった。
日本の攻撃はピヴォ当てが第一選択肢になっていた。これは戦術的には間違っていないと思う。アジアレベルにおいて日本のピヴォ--森岡薫、星翔太、そして今回召集されていない清水和也らは、相手のフィクソに対して、圧倒的な優位性を生み出せる。AFCフットサル選手権の東アジア予選では、マカオや韓国といった、かなり実力差があるチームが相手なので、シンプルなピヴォ当てでも十分に崩せるだろう。
ただ、タイには7番のクリツァダ・ウォンケーオ、5番のロンナチャイ・ジュンウォンスクという優秀なフィクソがいた。ボールは収まるものの、そこから振り向いてのシュートやドリブルなどはさせてもらえない。これは、アジアのベスト8以上では十分に考えられる現象であり、その場合にどんな工夫をするかはチーム内で整理しておく必要がある。
キャプテンの吉川は打開策として「3人目の動き」を挙げた。
「ピヴォと、当てた選手の2人の関係で崩すのが難しかった。そういう時は3人目が関わってこないといけない。それも少なかった」
2失点目もセットプレーから。これはパス回しをしている中で、星がGK関口優志にバックパスをしたことで間接FKをとられたもの。星には、そこまで厳しくプレッシャーがかかっていたわけではないので、おそらく単純な判断ミスだろう。結果的に、これが決勝点となった。フットサルの教科書の1ページ目に載っているようなルールのミスから失点したのは、軽率だったと言わざるを得ない。
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