更新日時:2019.09.28
吉川智貴の「代役先発」で証明したもの。「主役じゃなくていい」という変幻自在の天才・西谷良介の価値。
PHOTO BY軍記ひろし
吉川の代わりをしようとは思わなかった
敗れた第1戦から、ゴレイロを除く4人のなかで唯一の先発変更。皆本晃、吉川智貴、仁部屋和弘、星翔太のうち、負傷欠場した吉川に代わってピッチに立ったのが、西谷良介だった。
フットサルでは「先発=レギュラー」を意味しない。交代が自由であり、数分おきに選手が入れ替わることで局面を動かしていく──つまり選手交代も戦略の一部だからだ。とはいえ、大事な立ち上がりを任せる先発は軽視されない。指揮官は通常、最も信頼を置く5人を並べるものだ。
しかし、「日本史上最高のフットサル選手」との呼び声が高くて、誰よりも代えがきかない吉川が第2戦を戦えない。指揮官は “代役”に西谷を指名した。
「本来なら智貴が入るポジションですし、出場できない彼の気持ちを背負っていましたが、代わりをしようとは思いませんでした。なろうと思ってもできないし、自分の役割をはっきり出そうと思った」
西谷の役割とは、ゲームを作り、コントロールしながら、味方の力を引き出すこと。名古屋オーシャンズ以前の所属チームでは試合を決める超主役級の役割もこなしてきたが、代表チームでは、「黒子役」が求められている仕事だ。
「自分は主役じゃなくていい」。西谷は以前から、控えめにそう話す選手だった。自己主張の強い集団の潤滑油になれる。だからブルーノ監督が、吉川不在で西谷を選んだ判断は、容易に想像できる。
「晃も翔太も仁部屋も、(ブルーノ監督の就任から)3年間やってきて特徴もわかっていますし、お互いに引き出すことが自分の役割だと思ってプレーした」
吉川が力強いプレーの「剛」なら、西谷はしなやかさを持つ「柔」だ。さりげない一つひとつのプレーに意味があり、仲間にメッセージを伝えて、主役を引き立てる──自分が主役になれるにも関わらず。
第2戦の残り36秒、星翔太のダメ押し弾のアシストは、西谷のキックインからのパスだった。何か特別なプレーではない。しかし、その瞬間、その場所に、適切なボールを送り届けるという、当たり前のプレーをさりげなくやってしまう。どんな局面、どんな選手にもいち早く順応して、最適解を導ける。自分は主役にならなくても、何色に染まることもなく変幻自在のプレーを表現できる。西谷が、天才と呼ばれるゆえんだ。
タイ代表との連戦で、いい意味で目立たなかったからこそ逆に、証明されたもの。それは、西谷が、日本代表の代えがきかないもう一人の選手である──。
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