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三浦知良と果たした初のベスト16。俺たちを超えて行け!|薫陶対談:小宮山友祐×村上哲哉

PHOTO BY本田好伸、高橋学

「君が代はヘタでもいいからでかい声で」(小宮山)

──さて本番に向けて、選手も読んでくれているかもしれないので、W杯のピッチに立つにあたってのアドバイスをお願いします。

小宮山 ここまで来たらやってきたことを全部出してほしい。W杯はやはり独特で、私が過去3大会に出場して一番違うと感じたのは「審判の判定」です。アジアともFリーグとも違う。ファウルの基準がバラバラだと感じたので、ファーストコンタクトで基準となる線を引くこと。それをしないとファウルトラブルになってしまうので、当たり前ですが、自分たちが審判の基準のほうに合わせにいくべきだと思います。短期決戦なのでイエローカードの累積やレッドカードでの一発退場は避けたいですからね。

──雰囲気は独特ですか。

小宮山 やはり独特ですよね。雰囲気にのまれないでほしいです。代表の試合は、君が代を聞いて、国旗が上がっているなかで、試合前から感極まるものがあります。それがW杯となるとより一層、心に来るものがありました。だから逆に、空回りしないように。そのあたりは私もそうでしたが、空回り隊長の村上さんが(笑)。

村上 はい、空回りしかしたことないです(笑)。代表として選ばれた者しかW杯のピッチに立てないですし、そこを目指して戦ってきた選手がたくさんいるなかで選ばれた16人。まず胸を張って、国のために戦ってほしいです。

──フットサル日本代表W杯メンバーとしての自覚と覚悟を。

村上 はい。その上でやはり初戦など焦りが出てくる場面で、どれだけ一つになれるかがカギになる。自分のコンディションが悪いときに仲間に励ましてもらったり、別の場面では言い合ったり、ピッチ内外のそういう細かいところが結果に反映されると僕は思います。そこは徹底してほしいですね。僕は、技術的に長けている選手ではなかったですけど……。

小宮山 そんなことないよ。

村上 いや、代表では両足シュートが唯一の武器でしたけど、チームのなかでの自分のキャラクターや役割をどれだけ表に出して、チームのプラスにできるかがすべてだと思います。予選を戦っていない今のチームは、崩れれば早いし、まとまればどんどんパワーアップしてくれると思うので、表に出づらい部分ですが、メンタルを含めてそこがカギだと思います。イゴール、アルトゥール、ラファにも強い想いがあるでしょうし、翔太以外にもこれが最後のW杯と考えている選手がいると思いますからね。

──それぞれのキャラクターや想いを一つに。小宮山さんは2012年、木暮さんとダブルキャプテンでした。まとめるのに苦労した点は?

小宮山 特別なことはしてなくて、いろいろな選手と1対1で話をしたくらい。あの大会でよく覚えているのは、ギリギリでメンバー入りした(森岡)薫との会話ですね。親善試合も含め、彼はなかなか点を取れなくて「自分のプレーができない、俺はここにいないほうがいいんじゃないか」と珍しく弱気だったので「何バカなこと言ってんだよ!」と。でも、そういうふうに自分の思いを素直に出せる場は必要だと思うんですよね。

──それは「選手だけの決起ミーティング」でなくてもいい。

小宮山 はい。それも手段の1つですよね。ブルーノ監督は規律に厳しいと思うので、枠をはみ出す選手はいないと思います。ただ、フットサルはミスが起こるスポーツですから、そのときにどういったふるまいができるかはポイントになると思う。その点では、親善試合の映像を見ていて気になるシーンがいくつかありました。2012年は、テツ、小曽戸、冨金原(徹)、藤原(潤)の4人、そこに(北原)亘も含めてチームのためにいろいろと取り組んでくれたと、キャプテンとして思いますね。特に冨金原、藤原は試合に出られないなかでのふるまいが素晴らしかったですから、そういう選手は必要だと思います。智貴は、木暮や私とは違うタイプのキャプテンだと思います。彼のやり方でチームを一つにすればいい。ただ、1人ではなにかと大変だと思います。彼をサポートしてくれる選手は何人もいると思いますし、スタッフにW杯を選手として経験している木暮コーチがいるので大丈夫だと思います。

村上 僕も思ったことはオープンにして、ユウくんに相談したり、グレさんと言い合ったりして(笑)、そういう環境があったおかげでストレスを感じないで大会に臨めました。だから大会に入ってからはまとまる力がすごかった。ポルトガル戦で前半に大量失点してからパワープレーで追い上げたシーン、あれだけチームが一つになった試合は僕のフットサル人生でも数えるほどでした。

──大勢のサポーターがタイに行き、ホームの雰囲気を作っていました。

小宮山 間違いなく大きかったです。Fリーグは今ほとんど無観客で試合をしていますが、さびしさを感じてしまいます。2012年は日本で開催されているんじゃないかというくらいでしたし、「目に見えない力」はあると私は思います。山川太郎団長も含め何人かが現地へと行くと聞いていますが、1人だけでも全然違う。2006年のウズベキスタン(アジア選手権初優勝)も3、4人だけだったと記憶していますが、現地の人を巻き込んでのニッポンコールがあるだけで後押しとなりました。

村上 ユウくんの言うとおりで、2012年の映像を見返しても、盛り上がりがすごいですよね。あのパワーが選手を後押ししてくれたと思います。試合前の君が代から一体感がありました。

小宮山 君が代はでかい声で歌ったほうがいいよな。オマエ、超ヘタだけど(笑)。

村上 いや、でもグッと来ますよ(笑)。

小宮山 オレは、ヘタでもでかい声で歌ってテレビに抜かれているほうが好き。「気持ち入ってんなぁ」って、オリパラを見ていても応援したくなった。初めてフットサルを見る人もいると思うので、ファーストインプレッションじゃないですが、そういうのも大事だと思います。

「5年の準備期間に対してピッチに立つ時間は本当に短い」(村上)

──前回のラウンド16を超えてベスト8以上が現実的な目標だと思います。前回の敗因と教訓があれば教えてください。

小宮山 (前回大会でベスト8をかけた)ウクライナとの試合は、なるべくしてなった敗戦だと思います。リビアに勝って予選リーグ突破を決めて、決勝トーナメント1回戦の相手はスペインかウクライナの2択。「スペインだったらどうする」という感じで、ウクライナになって一瞬、歓喜だった。そういうのがよくなかった。北海道での親善試合で一度勝っていたので自信はありましたけど、(高橋)健介がケガをして、逸見が累積で出られないためFPは9人しかいなかったので、勝利した状況とも違います。ウクライナは逆の意味で親善試合とは違ってワールドカップモード、同じ選手なのかと疑うくらいキレがすごかった。前半だけで0-6までいって、後半追い上げても流れを引き戻せなかった。強豪国の馬力、まだまだ差があると感じました。

村上 結果論にはなりますが、僕は初めてのW杯で、ユウくんたちは何度目かのチャレンジ。日本として初めて予選グループを突破したことに、半分はチームとして達成感を感じてしまっていました。ウクライナに関しては、直前の親善試合で勝っていたこともあり「ベスト8が見えたな」と、誰も口にしてないですが、そうした慢心はあったと思います。

──正直にありがとうございます。

村上 決勝トーナメントのウクライナは、本当に全く別のチームでした。「こんなに強いのか」というくらい歯が立たなかった。難しいとは思います。日本の歴史として、W杯の決勝トーナメントで強豪国と一発勝負を競ったことが、それまでなかったのですから。ベスト8、ベスト4という目標も大事ですが、この苦い経験をしているグレさんも、選手もいるので、目の前の相手に対して力を出し切ることを徹底してほしいですね。

第一段階:世界との遭遇/現在地の確認
第二段階:世界への挑戦/サプライズと承認
第三段階:世界との勝負/対等な真剣勝負
第四段階:世界を奪いに/計画的な登頂

──このように国際大会に挑むフェーズがあるとするなら、今大会に挑む日本代表はどこでしょうか。日本フットサルの歩みを踏まえ、最後は我々の代表にエールをお願いします。

村上 第三段階から第四段階の間にあると思います。僕たちと比べてかなりレベルアップしていると思います。特に強度に関してはかなり上がっていて、今はアジリティや強度を前面に出して、強豪国とも対等に戦えています。スペインとも対等、本当に強いと思います。あとは結果にどうつなげるか。5年間の準備期間に対してピッチに立つ時間は本当に短いですから、そのなかでも力を出し切ることが、ベスト8、ベスト4を見据えて戦う上でのカギになると思います。

小宮山 テツと同じで、第三段階と第四段階の間ですね。ミゲルが来て、指導者ライセンスが整備され、各年代で優秀な指導者が増え、フットサルを言語化する選手が増えた。間違いなく子どもの年代からトップまで、日本のフットサルは成長していますし、今後日本の文化になるべき。間違った方向に進んではいないと思っています。それを証明するためにも、日本代表がW杯で結果を残すことが大事です。選手たちやチームにとっては、今回のW杯が集大成と位置づけるものであり、みんな様々な想いがあることは理解できます。自分も2012年はそうでしたから。ただ、日本のフットサルをさらに前進させるためには、ぜひ日本フットサルの未来のために、自分と自分たちの存在が多方面から見られ、多方面に影響を与えていることも汲み取ってもらいたい。代表が強くないと、どのスポーツもそうですが、世間的に認知され、注目されません。代表が強くなることであらゆる恩恵や支援を受けられるのだと思います。

──それはまさに、オリンピックで再確認しました。

小宮山 もちろん競技力がすべてではないですが、ただ、そういう使命感が代表選手には常にあります。「自分のプレーがフットサル界を変える」。これは大袈裟ではありません。だからこそプレッシャーや責任がのしかかるのだと思いますが、それをはねのけて世界を獲れる可能性を見せるのが代表選手の務めであり、この16名ならそれができると思います。チームメイトとして一緒に戦ったことのある選手もいますし、同じリーグで何度も対戦した選手たち。彼らの力に疑いはありません。とにかく、結果のみにこだわってほしい。さっきと真逆になるかもしれないですが、極論、まとまらなくてもいい(笑)。仲良しこよしで負けるくらいなら、ぐちゃぐちゃでも勝ってほしい。自己主張は難しいですが「思ったことをぶつける、他人の言ったことを受け入れる」。それができたら自然とまとまるし、強いチームになると思います。結果に、期待しています。

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