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作成日時:2022.10.04
更新日時:2022.10.06

幼なじみに紹介されたおっとり系男子は、日の丸が似合う「背番号4」|しょうこの心情系人物コラム

PHOTO BY勝又寛晃

「こいつ健太郎。まだ大学生だけど、かわいがっている選手だからよろしく」

この発言、私のコラムを読んでくれている方なら誰のものであるかお分かりだろうか? 田村佳翔に焦点を当てたコラムでも同じようなエピソードを紹介したが、私の幼なじみであり現在バルドラール浦安の監督を務める小宮山友祐は、たまにこうやって選手を紹介してくる。そして、私と選手は何をよろしくすればいいのか分からないまま「あ、よろしくお願いします。ははは」とぎこちないあいさつをするのだ。

文=しょうこ

ふにゃっとした笑顔でおっとりと話す人

そうやって紹介されたうちの一人が、当時18歳だった石田健太郎だ。多摩大学フットサル部所属の石田がFリーグの特別指定を受け、浦安でプレーすることが決まった直後だったと記憶している。

石田からしたら、なんの説明もなくなんだかよく分からない人を紹介されても困るだろうが「よろしくお願いします」と目尻の下がったふにゃふにゃした笑顔を見せていた。そして6年近い月日が過ぎた今、日本から8,000km以上離れた異国の地・クウェートでも、石田は話すたびにふにゃふにゃっとした笑顔を見せている。

日本代表は、9月5日から今大会に向けた活動を始めた。国内合宿では招集メンバー16名全員に取材をしたのだが、石田のコメントは印象的だった。浦安からは、石田のほかにGKのピレス イゴールとFPの長坂拓海が招集されている。石田と長坂は合宿でも同じセットで出ることが多く、リーグ戦で見せるコンビネーションの良さをそのまま合宿の場でも発揮していた。そのことについて触れると「彼の良さを出せるのは自分だし、自分の持ち味を知っているのは彼」とメリットを語った後に「でも拓海くんじゃなくて、違う選手と一緒にやりたい気持ちもありますが……」。このコメントには思わず笑ってしまった。石田は至って自然に「せっかく代表に入ったのなら、普段とは違った選手とプレーをしてみたい」という気持ちを話してくれただけで、まったく笑わせようとはしていないのだけど、見事なオチがついた。「同じチームから選ばれて一緒にプレーできるほうが安心だ」という選手もいるし、石田のような選手もいる。選手のパーソナリティはさまざまでおもしろい。

その「拓海くん」とのコンビネーションは、アジアカップのグループステージ第2戦、韓国代表戦でもいかんなく発揮される。第1戦は出場機会に恵まれなかった長坂が、2アシストの活躍を見せたのだ。左サイドの長坂からループパスを受けた石田が1点。そして、GKイゴールのロングフィードを長坂が頭で落とし、金澤空が1点。初戦を落とした日本にとって、韓国戦での完封勝利は大きな自信につながったはずだ。

木暮賢一郎監督は韓国戦を終え「浦安の健太郎と拓海、立川の(上村)充哉と(金澤)空の4人は自クラブでやっていることに近しいシステムなので、代表選手なら多くのセッションを重ねなくてもできるはず。そういったオプションを持っているという話は4人にもしていた」とコメントしていたし、長坂も「僕がピヴォに入る場面では健太郎と組んでいるので、いい意味でいつも通りに動けた」と話していた。そして石田はというとこう。

「拓海くんとの連係の良さは他の選手に比べたらあると思うけど、代表選手なら誰でもできると思います」

……見事な三段落ちである。字面だけを見ると冷たい印象を与えてしまうかもしれないので、ここはしっかりと伝えておきたいのだが、この後に「それだけ今の代表チームは、誰が出ても結果を出せるチームづくりができている」と言葉が続く。長坂との信頼関係があってこその発言であり、相変わらずふにゃっとした笑顔でおっとりと話していることも書き添えたい。

幼なじみと同じ、背番号4を着ける人

そんな石田についつい目がいってしまう個人的なポイントが、もう一つある。それは「浦安から日本代表に選ばれたフィクソが4番をつけている」ということ。そう、小宮山と同じなのだ。十何年も前の私にとってのフットサル日本代表は「幼なじみが選ばれたもの」だったので、代表を見るきっかけとなった小宮山の流れを引き継いでいる石田の存在はとても興味深い。

ここであえて「小宮山の系譜」と表現しなかったのは、タイプがまったく異なるから。石田はアラ・フィクソとして招集を受けているし、ガットゥーゾみたいなプロレスラーみたいな小宮山とはまったく違う。期待されるのは私が常々「一家に一台、吉川智貴」と称賛の声を送っている吉川のような存在だろう。とはいえ、随所に小宮山を彷彿とさせるプレーも垣間見え、これが木暮監督の話す「日本サッカー協会やFリーグ、各クラブが若い選手たちに投資をして撒いてきた種」の一つなのだと感慨深い。

その種が成長して、大輪の花を咲かせることを期待している。8年ぶりのアジアカップ優勝を成し遂げ、その柔らかな笑顔を爆発させる日まであと3つ。優勝したらまた、独特な石田節で喜びを語ってもらおう。

 

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