更新日時:2024.05.21
“強行出場”でのゴールとタイトル獲得を糧に、再起を誓う名古屋のエース・清水和也「日本のフットサルをもう一度強くするために、まずは自チームで」
PHOTO BY本田好伸
5月19日、名古屋金城ふ頭アリーナにてFリーグオーシャンカップ2024の決勝が行われ、名古屋オーシャンズとペスカドーラ町田が対戦。名古屋が4-3で勝利し、大会6連覇を達成した。
昨シーズンのリーグ戦で、例年以上のし烈な優勝争いを繰り広げた両チームがぶつかった、今大会の決勝戦。
1-3と名古屋が2点のビハインドを負い両チームに警告が多発しヒートアップする展開で、ベテラン・吉川智貴のゴールに続いて冷静に同点弾を決めたのは、“絶対王者”のエース・清水和也だった。
4月に行われたAFCフットサルアジアカップ直前の練習試合で負傷し、無念の離脱から約1カ月。
心の傷も足の痛みも癒えきってはいなかったが、自ら監督とチームに進言し準決勝のシュライカー大阪戦から戦線に復帰すると、この決勝でもチームを勢いづける役割をまっとうし、シーズン最初のタイトルを引き寄せた。
激闘を終え、清水に話を聞いた。
何が起きても、焦らずに戦う
──優勝おめでとうございます。チーム関係者から、コンディションは戻りきっていない状態での出場と聞きましたが、この決勝戦のプレーを振り返って。
まだ回復度としては70パーセントくらいで完治とは程遠い状態だったのですが、イマノル監督やチームメートのみんなと話をして、自分自身の出せる力を出したいという話もして、監督もいろいろなチーム状況を加味した上で判断してくれて、試合に出ることができました。出場するにあたって、メディカルのスタッフたちも僕の身体を気遣っていろいろな準備を一緒にしてくれましたし、もちろん100パーセントではなかったですが、できる限りいい状態で試合に臨むことができました。少しはチームの力になれたんじゃないかなと思うし、ひとまずホッとしています。
──昨日のシュライカー大阪戦でも、後半の早い時間にアンドレシート選手の得点をアシストしていましたが、清水選手がピッチに立つ時間帯だけ、ピヴォを置く形で戦っている印象でした。チームとしてベースのプレーモデルはどういう形なんですか?
出る人によって変わっていて、その時出ているメンバーのタレント性を考えて、3-1も4-0もミックスする形をとっていますね。たとえば僕が入った時はプレス回避も3-1をベースにしつつ押し込んだ時には4-0にも移行できる。監督がやりたいコンセプトをみんなしっかりと共有できてることでいい攻撃が生まれていると思いますし、僕自身もどちらでもプレーできる柔軟性を評価してもらっていることも感じつつも、やはりピヴォとして違いを出していかないといけないです。
──今日の試合は、一時3-1までリードを広げられる苦しい展開になりましたが、あの時間帯はどんなことを考えていましたか?
非常に苦しい展開だったことは間違いなかったですが、自分たちなら絶対に盛り返せると思っていましたし、質の高いパワープレーも持っているので焦りはあまりなかったですね。(吉川)智貴くんのゴールが決まったときに、これはひっくり返せるぞという自信もさらに強まりました。名古屋も町田もお互い満身創痍で、いろいろなアクシデントも起こり壮絶な決勝戦になりましたが、両チームがしっかりと戦った結果、すごくおもしろいゲームができたんじゃないかなと思うし、この試合に勝って優勝できたことの喜びは格別です。
──残り2分22秒で同点ゴールを決めましたが、その前にアンドレシートがボールを持った瞬間からゴールまでのイメージは?
彼なら間違いなく、相手のGKが前に出てもパスを通してくるだろうなと信頼していました。ただどこを通してくるかまでは全然わからず、もうちょっと後ろだったら外れていたかもしれない状況ではありましたけど、うまく点に繋げることができました。角につけた時に相手の守備もずれているなと感じていましたし、あのシーンはパワープレー返しをしようとしたところをカットして繋いだことで、より守りが後手に回っていたので、セグンドは絶対空くなと考えてそこに立ってました。
──追いついてその後もパワープレーを続行して、PK戦もちらつくような展開でしたが、昨季のアウェイ町田戦と同じようなゴールが生まれましたね。
正直、疲労度を考えるとこっちがミスする可能性もあるなとは思っていました。町田のディフェンスラインの選手も速い選手が多いし、吉川選手のところにプレッシャーをかけにいくんじゃないかと探り探りやっていたんですが、アンドレシートが足を攣って代わりに(甲斐)稜人が入って、バサジプレーについては全然練習してなかった部分もあると思うんですけど、角に入ったら絶対に空くし、(鬼塚)祥慶は職人と言えるくらい相手の嫌なところを知っていて、残り時間が少ない時は絶対にあの場所にいることもわかっていたので、狙った通りのゴールになったし、よくやってくれたなという思いです。
──優勝が決まって、みんなで輪になって「カンピオーネ」を歌っていながらも、足が動かないくらい消耗していましたね(笑)。
もうぼろぼろで、飛べないんじゃないかってぐらいでしたね(笑)。
──改めて、昨シーズンのファイナルシーズン続き、この土壇場で勝つ名古屋の“勝負強さ”をどう感じていますか?
今日は自分たちのエラーで失点を重ねてしまいましたが、それは監督も変わってチームを作り始めている段階でのエラーなので、これから先は少なくなるはずです。
大事なのは点を取られても何が起きても、焦らずに自分たちがやるべきことをやろうと思えていることがすごく大事なのかな、と。まだ僕は名古屋に入って2年目ですが、選手一人ひとりがオーシャンズの一員として、このエンブレムを胸に誇りを持って戦うということがこのクラブのDNAとして浸透しているし、それがベテランになればなるほど濃いものを持っている。そして、去年あの苦しみ乗り越えてリーグ優勝できたことが、さらに僕たちを成長させてくれました。
今シーズンは、イマノル監督のやりたいことをピッチで体現することで、より強さが増していくはず。まだまだ始まったばかりですし、怪我人もいてみんなそろって練習できているわけではないので、まだまだ発展途上ですが、見ていてもドキドキする試合を楽しんでもらいながらも、僕たちの強さを体感してもらえるように、頑張ります。
──AFCアジアカップを負傷離脱してからの、ワールドカップ予選敗退。どう気持ちを切り替えて、この新シーズンに臨みたいですか?
ワールドカップの予選敗退は、自分自身がそこにいれなかったという申し訳なさもあるし、みんなが精一杯頑張ってくれて、それでも結果が出なかったことについては、今後考えていかなきゃいけない。大事な舞台を逃してしまった責任を、一人ひとりが感じていかなきゃいけないなと思います。
ただ、だからといって全てが終わってしまったわけではなく当事者としてしっかり頭を切り替えて、まずは日本のフットサルをもう一度強くするために、自分たちが日々切磋琢磨していかないといけないと思うし、代表チームでの結果とは切り離して、まずはチームで結果を出すことが今の自分には必要なことだなと考えています。まだダメージは残っていますし、正直そんなにすぐに切り替えられるようなことではないですけど、この悔しさや結果を背負いながら、必ずリベンジしたい。それはもちろん僕だけではなく、あの場にいたメンバー全員が思っていることなので、その気持ちをこれから始まるリーグ戦にぶつけてレベルアップできるように、今シーズンは戦っていきたいなと思っています。
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