更新日時:2025.04.07
現役女子Fリーガーが手を取り合い、“勝手に”を“一緒に”。競技普及プロジェクト『katteni(カッテニ)』がコラボゲーム会を開催【レポート】
PHOTO BY伊藤千梅
3月30日、東京都墨田区のSUMIDA FUTSAL ARENA(すみだフットサルアリーナ)にて、「第2回女子フットサルコラボゲーム会」が開催された。
本イベントは「女子フットサルを盛り上げること」を目的に、日本女子フットサルリーグ(女子Fリーグ)でプレーする現役選手が立ち上げた、プロジェクトチーム『katteni(カッテニ)』の活動の一環として企画された。
女子Fリーグの新規ファン獲得のみならず、同じトップリーグで活躍する選手、地域リーグや育成年代、個人プレーヤーの意識を引き上げ、多角的に女子フットサルの環境改善や価値向上を目指す、『katteni』メンバーの思いとは。
取材・文=青木ひかる
撮影=伊藤千梅
充実感にあふれた、2時間のゲーム会
このイベントは、2024年8月に行われた初回に続き、約7カ月ぶりに開催されたコラボゲーム会。
プロジェクトチーム『katteni』のメンバーである、バルドラール浦安ラス・ボニータスの筏井りさと田中千尋、フウガドールすみだレディースの勝俣里穗、立川アスレティックFCレディースの藤田実桜(当日はチーム活動と重なり欠席)の4名が主催者として、告知や集客、進行役を担当。ゲスト5選手を招き、約40名の参加者が集まった。
まずは事前に割り振られたチームごとに分かれ、選手も加わり、各々自己紹介からスタート。会話を楽しみながらボール回しを行った。
初回のゲーム会にも参戦している方も多い中、一際明るく元気な声で場の雰囲気を盛り立てていたのが、「ママ友」チームのみなさん。
お子さんが通うサッカーチームのコーチをバルドラール浦安ラス・ボニータスの元選手の杉山藍子氏が務めていたことがきっかけでファンになり、筏井選手をはじめラスボニの選手が開くイベントには、積極的に通っているそうだ。
10分程度のウォーミングアップを終え、場も温まったところで早速ゲーム会の本番がスタート。選手もエンジョイフットサルを楽しみつつ、随所で魅せるテクニックや鋭いシュートに、たびたび歓声が沸いた。
1チームに複数名『katteni』のメンバーやゲスト選手が交ざる形で試合を重ねていく中、終盤には、選手チームvs参加者チームの対戦カードも用意された。
「激しい接触プレーはナシ」としながらも、現役選手とのマッチアップの際には、参加者も真剣な表情に。
最後は、全選手のサイン入り色紙を懸けたジャンケン大会が行われ、怪我人もなく無事にイベントは終了。
参加者だけでなく、ゲスト選手も主催メンバーにも笑顔が絶えず、終わった後も全員が充実感にあふれた表情だったことが、印象的だった。
キーワードは「垣根を越える」
「様々な“垣根”を越えて、女子フットサル界をもっともっと盛り上げたい」
そんな強い思いをもち『katteni』を立ち上げた4人が主催するゲーム会だが、特徴として「いろんなチームの選手と交流ができること」が最大の魅力であり、押し出したいポイントの一つでもある。
スケジュールや開催場所の調整のしやすさ、既存ファンによる集客の目処の立てやすさもあり、チームメート同士で個サルやクリニックを企画することが多い中、なぜ異なるクラブの選手を巻き込み、開催することにこだわっているのか。
すみだの勝俣は、自身が戦う女子Fリーグの集客について大きな課題感とあわせて、その理由を語る。
「今の女子Fリーグは一つの会場に全チームが集まって、1日通しでリーグ戦を行う『セントラル開催』で運営されていて、お客さんは1枚のチケットでいろんなチームの試合を楽しむことができます。ただ、残念ながらホームチームの試合を見て帰ってしまう方ばかりで……。どのチームも、年間を通しての集客に苦戦しているのが現状です」
昨シーズンのすみだを例に挙げれば、ホームのひがしんアリーナで行われたアルコ神戸戦は約1,000人近くが集まったものの、直後に行われた立川vs福井丸岡ラック戦は、200人台まで観客数が激減。逆に、立川の本拠地・アリーナ立川立飛での開催時には、すみだvsSWHレディース西宮の観客数が200人台を割るなど、同じ首都圏開催であっても数字が伸び悩む状況だ。
「もちろん特定のチームを熱量高く応援することも素敵ですけど、できれば女子Fリーグ全体を応援してくれる人を増やしていきたい。そのハードルを下げるために、いろんなチームの選手と交流できる場をつくって、『この間ゲーム会で喋った選手が出るから、次の試合も見よう』とまずは思ってもらえたら、という狙いがあります」
“一緒にボールを蹴ること”のパワーはすさまじく、こちらのイベント参加者のあやかさんは、すみだの選手が開いていた個サルで、2カ月ほど前に初めてフットサル選手とふれあい、『女子Fリーグ』の存在を知ったとのこと。
「今シーズンは、すみだの試合には絶対に行くと決めているし、開幕が楽しみ!」と話しながら、このゲーム会で筏井と初対面し「めちゃくちゃうまいし、カッコよすぎる……」と興味津々の様子。まさに勝俣が話していた作戦通り、このゲーム会が他チームの選手への関心を高める場となっていることが伺えた。
「まずは知ってもらうこと」が大切
あわせて、このゲーム会を通じて『katteni』のメンバーが掲げているミッションが、若手に対して選手として認知してもらう重要性や、アスリートとしての価値を高める意義やノウハウを伝えていくこと。
今回のゲーム会にも、「まずは知ってもらうこと」の大切さを肌身で感じてもらうため、各チームの若手選手に積極的に声をかけ、ゲストとして招いている経緯がある。
「選手は自分で練習時間を合わせられる仕事を探して、働きながらプレーしている選手が多いですが、若い選手からは“職場でも選手であることに興味を持たれない”、“自分をどうアピールしていいのかわからない”という話をよく聞きます。せっかくタイトルを獲るようなチームで活動していても、周りの誰も知らないなんて寂しいし、もったいない」
一人ひとりの意識や行動が変われば、フットサル選手の社会的地位はもっと高められるはずだと、筏井は強調する。
「どんな選手を目指していて、その目標に対してどう向き合って取り組んでいるのか。それがちゃんと伝われば、応援したいと思ってくれる人や企業もいるということを、知ってもらえたらいいなって。ゲーム会はその一例でしかないので、選手同士の情報交換の場として、自分に合ったやり方を探してほしいです」
実際にゲストとして参加した、アニージャ湘南の村田莉菜は「こうしたイベントは、私自身初めて。緊張もしたけど、私自身や湘南のことを知ってもらえる機会だと思って、積極的に声をかけることを心がけた」と振り返り、「この輪を広げていきたいし、自分でもできそうなことにチャレンジしていきたい」と語った。
またアルコ神戸の後藤茉耶も「関東開催の試合も多い中で、ぜひ自分たちのような関西のチームの魅力も知ってほしいし、地域関係なく応援してくれる人を増やしたい。しっかりアピールします!」という宣言を、有言実行。最後の挨拶でも一番に手を挙げ、「神戸の試合もぜひ、見てください!」と元気よく締め括った。
“観る”と“蹴る”の裾野を広げるために
クラブや年代をまたがるゲーム会を開催した『katteni』だが、今後は地域リーグのチームや育成年代とも関わりをもちたいと考えている。
特に、高校生年代の大会はまだまだ少ないのが現状だ。それでも実際に、高校生のクリニックや大会に足を運ぶことで、接点を増やし始めている。
女子Fリーグを目指すべき「憧れの場所」に。「カテゴリー」の垣根を越えて女子フットサルを盛り上げていきたいと、運営メンバーの田中は意気込む。
「フットサルはもともと生涯スポーツで、高校生からでも大人になってからでも始めやすい競技です。だから、サッカーからの転向も含めてもっとフットサルプレーヤーの裾野を広げていきたい。競技者に女子Fリーグを観てもらう機会も増やして、女子Fリーグが“目指したい舞台”になれるようにしていきたいですね」
2025年は、FIFA女子フットサルワールドカップの記念すべき初回大会が行われる、特別なシーズン。
ただ、大事なのは大会前後の一過性のブームで終わらせないこと。“観る”と“蹴る”の両軸で、フットサルを楽しむ文化を根付かせることが、『katteni』のメンバーが目指す未来だ。
「自分一人じゃどうにもならないですけど、こうして筏井や勝俣、藤田の3人と一緒に、いろんな人を巻き込んでいければ、できることはたくさんあると思っています。何が正解かはわからないけど、いろんなことにチャレンジしていきたいです」
手探りの中でも、できることを一つひとつ。
「勝手に」を「一緒に」に変え、女子フットサルの輪を広げる4人の奮闘は続く。
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