更新日時:2023.03.26
さよならはグータッチで。大好きなガリンシャを見送る、最初で最後のインタビュー|俺たちの全日本
PHOTO BY高橋学
3月6日の朝10時。わたしのスマホが鳴る。
通知音の正体である、バルドラール浦安公式Twitterの最新の投稿には、退団選手のお知らせ。そのなかに、ガリンシャの名前を見つけた瞬間、思わず「聞いてないんですけど!」と声が出た。
鍛代元気の記事に記されていた「応援したい選手を明日、応援できなくなるかもしれない。行けばよかったではもったいないです」という言葉が頭をよぎる。迂闊だった。まさか、今シーズン16ゴールを決めたエースが、チームだけでなく日本を離れてしまうなんて思ってもいなかったから。
海外移籍や外国籍選手の場合、全日本選手権に出場せずに、日本を飛び立ってしまう選手も少なくない。別の仕事で、1回戦と2回戦の会場に行くことはできなかったものの、メンバー表を見てホッとした。まだ、気持ちの整理がついていなかったけれど、大好きな選手の雄姿を見届けるために、準々決勝が行われる駒沢の会場へ向かった。
浦安のエースはわたしの週末ヒーロー
2022年8月からSALに携わるまで、わたしはただの「Fリーグファン」だった。しかもまだまだ観戦初心者で、これから競技のルールや戦術、選手の名前を覚え、Fリーグの魅力をもっと知りたいと思いながら、2022-2023シーズンの開幕を楽しみにしていた。
開幕当初、特に贔屓のチームはなかったが、浦安のホーム開幕戦には行こうと決めていた。昨シーズン、見ていて一番おもしろかった試合が浦安のホームゲームだったことと、チケットがお手頃だったから。他のチームでは4,000円代が相場のアリーナ席が、なんと2200円。ちなみに、神奈川の自宅から千葉の舞浜までの交通費については、考えないことにしている。
そして、7月2日の浦安のホーム開幕戦。第2ピリオドに目の前でハットトリックを決め、チームを勝利に導いた選手が、浦安の9番ガリンシャだった。
2018年の夏にブラジルから来日し、フウガドールすみだに加入したガリンシャは、3シーズンで57ゴールを奪い、2021-2022シーズンから浦安の一員になった。利き足の左から放たれるシュートのほか、周りを生かすプレーも得意な選手だったが、浦安の加入初年度は、ゴール数が例年の半分に減ってしまい、少し苦しんでいる様子が垣間見えていた。
迎えた2年目の今シーズン。
1点目の反転ゴールと、彼の主戦場である右サイドから、大島旺洋との連係で奪った2点目のゴール。そして試合時間、残り2分で決めた決勝点からのガッツポーズで、完全に心を奪われた。
ハイライトリンク:https://abema.tv/video/episode/38-376_s70_p18
「好きだ!!!!」
興奮冷めやらぬわたしは、試合が終わった後もしばらく席から立ち上がることができなかった。その日から、舞浜にある浦安のアリーナが、わたしにとっての“夢の国”になった。
ほどなくしてSAL編集部に入り、立場上、特定のチームばかりを応援するわけにはいかなくなった。それでもゴールを決めた一報を見ては、ひそかにほほを緩ませ、胸を躍らせた。
時々、それが“ひそか”ではなくなって、編集部・本田好伸氏から「浦安に甘くない?」なんて指摘を受けたりすることもあった。それでも、本業をこなしながら、慣れないメディアのお仕事にも取り組み続けられたのは、彼の存在が大きかったように思う。
スポーツの応援ソングとしても知られる、SHISHAMOの『明日も』という曲に“週末はヒーローに会いに行く”というフレーズがあるが、この1年間のわたしのヒーローは、間違いなくガリンシャだった。
仕事で競技に携わると決めてから、選手にファンサービスを受けることは避けてきた。本当はサインも欲しかったし、写真も撮りたかったけど我慢した。その代わりにもう少し取材に慣れてから、いつかガリンシャにインタビューできたらと、楽しみにしていた。
けれど、その「いつか」は思いもよらない形で、わたしの心の準備ができる前にやってきてしまった。
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