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【エプソン販売と町田】コロナ禍を乗り越えた新しい「パートナー」のカタチ

PHOTO BY大西浩太郎、本田好伸



「優勝できなかったTシャツ」だって無駄にならない

──マッチデープログラムを始めたのはいつですか?

関野 社長に成り立ての時、シーズンが始まる前です。一番、路頭に迷っていた時(笑)。

──再生紙は、どのようにして再生されているんですか?

梅木 試合後に回収ボックスで回収して、エプソンのPapeLabに入れるだけです。もちろんホッチキスの芯など付着物があれば取り除かなくてはいけないなど、紙の投入時には少し注意が必要ですが、作成までの工程が少ないのが特徴です。紙の厚さにもよりますが、一般的なA4普通紙サイズだと1時間に700枚以上できます。

──再生紙の工場に持ち込むとかではなく、エプソンの機械でできるんですか?

梅木 はい、そうなんです。エプソンの会社内に設置しています。

関野 すごいでしょ。って、僕が自慢しちゃう(笑)。

その機械があまりにすごいので、今ではいろんな自治体で取り入れてもらっているようです。しかもドライファイバーテクノロジーという技術で紙を作る際に水をほとんど使わないので、従来の方法よりも環境にいいんですよ。

梅木 厚さは10段階で調整できますし、再生紙は色味のついたパウダーを入れることで色付けをしたり、白さも調整できます。

──「再生紙」とひとくくりにしていましたけど、そんなに違いがあるとは。

関野 全然、違うんですよ。

梅木 すぐに再生できますし、紙をその場で繊維化できるので、機密情報が漏れる心配もありません。

──他にも、選手カードやハリセンうちわ、プロジェクションマッピング、それにTシャツもエプソンさんの製品を使用して作られているようですね。

梅木 昇華転写プリンターと呼ばれるものを導入してもらい、Tシャツにプリントし作成いただいています。ロットを気にせず、少量多品種で製作できるので在庫が余るリスクも低減でき、環境にも配慮できます。

関野 グッズを内製化できるのはすごく大きいです。Tシャツやシューズケースなど、全部うちで作れるようになりました。

ゆくゆくは専門の人材を雇って、グッズを全て内製化して販売したいですね。すでにやっているところもありますけど、これは絶対、他チームも取り入れたほうがいいと思います。機械のコストはすぐに回収できると思いますし、そう考えるとすごく安いですから。

関野 僕らが導入したものはTシャツを作れるサイズですけど、もっと大きな布を印刷できる製品もあります。試合で使う横断幕などもプリントできますからね。

──優勝Tシャツも作れますね。

関野 エプソン販売さんとの取り組み前ですが、プレーオフを戦った何年か前に作って、「優勝できなかったTシャツ」として今でも余っています(苦笑)。でも、そういうのがなくなるわけですよ。無駄が出ないので、イコール「環境」への取り組みにもつながっていきます。

梅木 世間ではまだ、プリンターで作ったTシャツに対して「汚い」「くすんでる」「そんなのできるわけない」といったイメージもあります。ですが今はすごくいい仕上がりにできるので、我々としてもペスカさんを通じて知ってもらえる機会になっています。



失敗しないとわからないこともある

──改めて、両者の取り組みは他のクラブや他のスポーツにも参考になりそうです。Fリーグにとっても企業にとっても新しい、大きな気づきになると思います。

梅木 ペスカさんとの取り組みが成功事例となっているのは本当にうれしいです。いやらしい話かもしれないですが、我々にとってそれはビジネスチャンスでもあります。私たちがペスカさんにアイデアを還元することで、ペスカさんの魅力がより上がって、我々のビジネスチャンスもまた増えるといった相互の循環は今後も発展させていきたいです。

──もちろん、成功には失敗もつきものですか?

梅木 そうですね。たくさん失敗はしていますよ。それこそハリセン一つとっても、試作品をつくってもなかなかうまくいかなかったり、マッチデープログラムも印刷でテクニカルな壁があったり、いろいろと。ですが、失敗しないとわからないこともあって、失敗したら「次はこうしよう」とPDCAサイクルを回して、いい形ができていると思います。

──この先、グッズ製作でやりたいことはありますか?

関野 もともと、小野路竹倶楽部という団体と竹を使ったワークショップをしていたのですが、その竹と再生紙でゲーフラを作りたいな、と。竹を使うことも社会課題の解決に向けた取り組みの一つです。町田市は高齢者が保有している土地が多いので、放置竹林がめちゃくちゃあります。同様のことが日本全国でも起きていて、それが社会課題になっている「竹害」です。プラスチックを使ったゲーフラはたくさんありますけど、我々がハブになって、竹と再生紙を使用したグッズを作ることで社会課題の解決につなげたいなと。



「ペスカラボ」で町田市をつなぎ、社会をつなぐ

──両者の「共創」の取り組みに名称はありますか?

関野 プロジェクト名は『ペスカラボ』です。

僕らがハブになって、企業・行政・市民をつないで、社会課題の解決やSDGsの取り組みなどを手掛けていきます。だから今後、町田市内で紙を地産地消したいと考えています。我々の紙だけではなく、例えば市役所内で出た紙も全部再生紙に変えて、町田市民に渡す封筒を作るとか、そういうところを今、目指しています。

──「ラボ」ということは研究所のイメージですか?

関野 僕らが全てをつないで、僕らが持っているコンテンツでなにができるのかを研究していくイメージですね。まだまだ発展していきます。

梅木 来るものは拒まずという研究所です。公園の砂場みたいなもので、砂遊びし始めたらみんな集まって、気づいたらお城や街が完成しているような、そんな場所でありたいですね。

──素晴らしい関係性ですね。それにすごく、楽しそうです。

梅木 そこは一番お互いが目指しているすところですね。

関野 楽しくやっていかないと続かないですからね。



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