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作成日時:2024.01.24
更新日時:2024.01.26

【日本代表|6000字会見全文】仁部屋和弘&新井裕生の復帰、アルトゥール不在、逸見への期待……木暮賢一郎監督がポルトガル代表戦のメンバー選考を“全部説明”

PHOTO BY軍記ひろし

日本代表は1月30日から2月5日にポルトガル遠征を実施する。2月3日、5日には、FIFAフットサルワールドカップ2021で初優勝した現世界王者・ポルトガル代表と国際親善試合で対戦。2022年9月にブラジル代表、2023年12月にアルゼンチン代表とビッグマッチを続けてきた日本代表が、ついに頂点に挑む。

1月24日に今回のポルトガル遠征に参加する17名のメンバーが発表され、木暮賢一郎監督が記者会見に登場。仁部屋和弘や新井裕生の復帰、オリベイラ・アルトゥールの不在など、選考理由を説明した。

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ベテランへのネガティブなイメージはない

■木暮賢一郎監督

今回も非常にいいマッチメイクができました。具体的には、2024年、我々の最大の目標であるワールドカップと、その予選を兼ねたアジアカップを勝ち抜いて大会連覇することへ向け、最後の準備となる試合が現世界王者のポルトガル代表となります。

これは有意義で素晴らしい機会です。

ここまでの強化方針としては変わりません。強豪国とゲームをしながらチームをつくること。そこは12月のアルゼンチン代表戦を含め、自分たちの立ち位置を知る意味でも、アジアカップに向けても最高のシチュエーションですから、いい機会にしたいです。

──仁部屋和弘選手の招集を含め、今回のメンバー選考の狙いは?

自分が監督になってからは、一貫して選手のパフォーマンスを見ています。Fリーグや自クラブでハイパフォーマンスを出している選手を重視してきました。同等の実力であれば、まずは若い選手を選ぶということも変わっていません。ハイパフォーマンスについては、リーグにおいて競争力の高い試合のパフォーマンスを見ています。ここまで話している選考基準、重視するポイントに合致する彼がこのタイミングで入りました。

メンバー選考のもう一つは、重要なアジアカップ前の最後の準備、テストという位置付けになります。もちろん代表として最高のチームと戦うので、勝利を目指し、現在地を知るということは変わりません。ただアジアカップにどの選手が必要になるか。当然、いつどこでどのようなことが起きるかわからないので、誰が選ばれてもハイパフォーマンスを出せる選手を多く見極めるためには、ここでしか招集するタイミングがありません。

あとは、選手の拡大、拡充、新しいオプション、武器を増やすことも考えています。私はベテランの選手を呼ばないとは言っていないですし、若い選手が好きで、同等の実力であれば若い選手と言っていますが、ベテランへのネガティブなイメージはありません。

──Fリーグファイナルシーズンは、最後まで優勝が決まらなかったり、いろんなトピックがある戦いでした。今シーズンを見てどのように感じていますか?

ゲームには、2つの視点があります。ゲームクオリティと、ゲームの意味合いです。強度やエモーショナルさという視点があり、最高のゲームは、両方を備えています。質が高く、モチベーションが高い。タイトルがかかっていたり、ダービーであったり、順位が変わる戦いであったりですね。

代表チームは、クラブとは違い、私が選べるので、リストを作って、質が高い選手を自分の目で見て決めることができますから、そうしたものを踏まえて試合を見ています。

代表におけるゲームシチュエーションは、W杯やアジアカップなど常にタイトルがかかっていて、モチベーションやエモーショナルなどは、常に最高でないといけません。

ですから、リーグでも、ファイナルのような一つのミスで試合が決まったり、満員の観客の前で試合をしたり、そうしたなかでハイパフォーマンスを発揮することが大事です。

その点では、今シーズンは最後の最後まで優勝争いをしていたこともあり、観客がたくさん来ることも、選手のレベルアップがあることも、選考する立場としては非常に多くのことが見て取れる状況でした。我々にとっても、リーグにも、選手にも、ファン・サポーターにも、スポンサーにも、非常にいいシーズンだったと思います。

Fリーグのクオリティがもっと上がることが代表の強化につながりますし、常に相互作用が働きます。代表チームのベースとなるのは、リーグ戦や育成年代の大会、トレーニングなど、日本で行われていることが土壌です。海外でプレーする選手もいますが、根っこは国内のレベルアップが代表の成長につながりますので、今シーズン良かっただけではなく、来シーズンはもっと質を上げていく、そことエモーショナルの掛け合わせの先に世界最高峰のリーグがあると思います。そこを目指して継続的に力を合わせてやっていく必要があると思います。今シーズンのファイナルシーズンは、アジアカップ前の大事な時期としても、いい試合が多かったなと思っています。

──若い世代をさらに呼んでいくという、監督としての意思は?

そこは常にあります。多くの若い選手を招集していますし、これまでも育成年代の監督やコーチを務め、入口となるところに責任をもってきました。意思は常にあります。

実際に招集できるかどうかは、クラブに所属する若い選手が自分たちで確固たるポジションをつかむこと、リーグで我々の基準を満たすパフォーマンスを示すこと。もう一つは、より多くの監督や指導者が勇気をもってサポートして、その機会を彼らに提供できるか。日々のトレーニングを見られているわけではないので。ただ代表に呼ばれるためには若い選手がクラブでハイパフォーマンスを出し、ポジションをつかみ、日々の練習からアピールすること。そして指導者の支えも無視できないものだと思っています。

──Fリーグの戦術のトレンドと世界基準とのすり合わせは?

Fリーグのすべての監督をリスペクトしています。各クラブの目標、監督の哲学、目の前の試合、サイクルのなかで、どこにターゲットを定めているかの全部を把握はしていないですし、行われていることが世界レベルとか、良い悪いということは言えません。

各クラブの目標も環境も異なりますから、戦術、戦略は私が言うことではありません。ただ、選手がコンペティティブであること、チームが競争力をもって目の前の試合を戦うということは一律だと思っています。その意味では、まだバラつきはあると思います。

タイトルを争うクラブやそこに迫るクラブと、まだそこのエリアにいけていないところ。戦術や戦力ではなく、マインドとしてですね。競争力をもって、シーズンで波が少なくできるところはバラつきがあるので、そこが常にハイレベルで競争力があるチームが増えることが、代表チームの強化にもつながります。そこは今に限らず期待をしています。その競争のなかでハイパフォーマンスを出す選手が増えることが代表強化になります。

なので、上位リーグは非常に競争力があって、なおかつエモーショナルなゲームが、近年の中でも多く見られたと思っています。



相手への分析も対策もあるが、まずは勇敢に戦うこと

──現世界王者のポルトガルはどのようなチームでしょうか。

ポルトガルはこの5年くらい世界のトップにいる国です。A代表がW杯やユーロで優勝しただけではなく、U-19も欧州王者となり、女子も、決勝でいつもスペインと争っています。ユース五輪ではタイトルも獲得しています。全カテゴリーで、すべての大会でタイトルやファイナルに進んでいることが、ポルトガルの強さを表していると思っています。

クラブレベルでも、常にUEFAのファイナルや王者になっています。間違いなくナンバーワンの国だと言っていいと思います。A代表についてはここ数年、タイトルを取り続けています。先日、W杯予選でジョージア代表に黒星を喫したことが相当、久しぶり。それくらい勝ち続けています。育成年代にも力を入れているので、日本で言えば原田快のような、10代の選手がプレーしていますし、我々との試合にも出てくる可能性があります。

王者でありながら、下からの突き上げも、間違いなく世界トップだと思います。

フットサルの中身では、我々が選手の頃とはイメージが異なると思います。守備では近年、かなりの割合でマンツーマンです。アタックでも、リカルジーニョやペドロ・コスタがいた時代は、4-0のシステムを使い、2タッチ以内で小気味良くボールを回して背後を狙い、ポゼッション率が高いイメージもありました。ただ近年は1対1とピヴォ、あとはクラブレベルでもGKを活用する戦いを多く見せている国です。

特に1対1、アイソレーションや個人のアタックに対する質の高さが顕著です。監督としてよりも、フットサルに長く関わっている個人の見解としても、日本との相性は良くないと思います。アルゼンチンのように組織vs組織になるほうが、代表チームは戦いやすい。フットサルの20年ほどの歴史を振り返っても、ブラジルやロシア、以前のイタリアのようなチームにも苦手な傾向はあると思います。ここまでは個人的な見解です。

監督としては、そうしたチームとやれることは素晴らしいと思います。分析をした上で、臆することなく、真っ向からぶつかっていくことが大事です。戦術の戦い以上に、言葉にすると「気持ちを入れて頑張れ」ではなく、本当に「勇敢に戦うこと」が重要です。それが間違いなくカギとなる。彼らのリーグでもそれが起きています。スポルティングと戦う時には、相手は引いてしまう、勇敢になれないことがあります。勇敢な姿勢でゲームに入らないと、我々にとって苦手とするような部類のチームであることは間違いありません。

分析も対策もありますが、そうしたものを具現化するためには、チームとして、選手が勇敢に戦うことがまずは大事です。全選手を分析していて、相手の特徴も理解していますが、そこを忘れてしまっては厳しいゲームになると思っています。

──勇敢に戦うこと。そこへの働きかけとしては?

まずは、勇敢に戦うためには、やり続けること。1試合だけではなく、これまでも様々なゲームで学びがありました。2022年、国内で戦ったブラジル戦は、そうした準備をしながらも勇敢に戦えなかったことで、スコアも内容も苦しい試合でした。あれがスタートだったと思います。その実体験から選手もよりタフになっていると信じていますし、その歩みを止めることなく、さらなる競争力をもって突き進まないといけません。

ポルトガルという相手は、現在地を知る意味でも最高だと思っています。非常に大きな目標があり、選手として、とても重要な2024年の最初の戦いになります。

W杯が控えていて、直前の予選が控えている。ポジション争いもあります。メンバー入りをかけたテストやアピールの場所でもあると思うので、そこをポジティブな方向に導いていいゲームをしたいです。

自分はストーリーが好きですから、このタイミングで仁部屋のような選手が選ばれて、ここでプレーすることも、目に見えないながらも大きな力になります。彼自身、相当な覚悟でくると思いますから、若い選手がそれを目の当たりにして影響を受けることにも期待しています。ベテランやそこに近しい選手たちも勇気になると思います。そうした相乗効果が出たら、日本というグループはもっと強くなると信じています。



今は代表に呼ばれていなくても、常に見ている

──メンバー選考について、もう少し教えてください。

3つあります。

内田隼太は、移籍をして、1部から2部のチームに移りました。FIFAデイズの適応は2部にはないので、1試合目は出場しません。彼の合流は2月4日で、5日に向けて準備します。

2つ目は、(オリベイラ・)アルトゥールは、中国リーグがオフシーズンで、彼が今いるブラジルもプレシーズンが始まったばかりなので、練習環境がなく、個人でのトレーニングがメインなので、今回はケガのリスクやコンディションもあるので招集していません。

3つ目は、仁部屋の話題もありましたが、久しぶりに復帰する新井裕生について。得点王という、非常に大きな結果を示したこともあります。彼は、自分が監督になった立ち上げ当初のUAE遠征には招集していますが、2年弱ぶりです。リストにはずっと入っていましたし、タイミングを測っていましたが、ギリギリで見送ってきました。

今までもそうした多くの選手、例えば伊藤圭汰内村俊太など、代表監督としてうれしいのは、しばらく呼ばれていなくても、常にモチベーションが高く、言葉を交わしてはいないですが、自分がつかみたい場所、戻りたい場所が見て取れることです。

今は代表に呼ばれていなくても、一度呼ばれて次になかなか呼ばれなくても、我々は常に見ています。どの選手がよりハイパフォーマンスを見せているか、代表に戻りたいという競争力とモチベーションがあるか。そうした選手の存在はうれしいですし、そうした選手がもっと増えてほしいと思っています。

──FIFAデイズの関係などもあり、収集できない機会もあった逸見勝利ラファエルも、ポジションは確約されていません。改めて彼への期待は?

一つは、長い代表チームの視点では、日本フットサルの成長を描いてきたなかに常に彼がいたのは事実です。自分自身がもう呼ばないというジャッジを下したこともありません。

逸見は、代表グループの常にリストにいる選手です。

もう一つは、アルゼンチン戦にも招集をかけていて、その後にケガで呼べませんでした。我々の選考意図や狙いは、アルゼンチン戦でもプレーする予定でした。

最後に、彼とも話をしています。FIFAデイズのことで、2022年のアジアカップの時も、クラブに出してもらえませんでした。新しくスタートした重要なグループに残念ながらいることができなかった。誰のせいでもありません。その事実があるなか、約1年間は、FIFAデイズやクラブとの関係で呼べたり、呼べなかったりという事実がありました。

若手が台頭してきたこと、監督のプレーモデルとの優位性もフラットになったことで、活動をともにする時間が少ないことはディスアドバンテージである、と。昨年のタイ遠征、モロッコ遠征、ブラジル遠征。この3つでは常に招集をしていました。そこでアダプトできない課題もあり、台湾でのアジアカップ予選では招集しませんでした。

ただそこは、仁部屋や裕生、俊太など、たとえ外れてもモチベーションを失わず、高いモチベーションでハイパフォーマンスを出している選手と同じです。世界最高のポルトガルリーグにおいて、首位のチームで、プレータイムも、しっかりとつかんでいます。国内リーグだけではなく、我々の選考基準を満たしています。競争力があるなかでハイパフォーマンスをしている。ですから当然、彼への期待はあります。大事なことは、最後に選ばれる14名は、うまい選手だけでも物足りない、一生懸命やるだけでも物足りない、戦術理解度が高いだけでも物足りない。代表チームとして戦うための様々な基準を満たし、マッチしていくことは、彼だけではなく必要なことです。その前提条件は備えています。

あとはこの競争のなかでその座をつかめるかどうか。ピッチ内外でパフォーマンスを示せるか。彼だけではなく、それはすべての選手に求めていることです。



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