更新日時:2023.03.03
【渡邉知晃コラム】さすがすぎる吉川智貴、試合を左右した2つのプレー。立川の下剋上はもう無理?|プレーオフ決勝第1・2戦
PHOTO BY高橋学、勝又寛晃、ABEMA
2月18、19日に、Fリーグ2022-2023プレーオフ決勝、名古屋オーシャンズ vs立川アスレティックFCのの第1戦、第2戦が行われた。第1戦は5-1、第2戦は5-2で名古屋が2連勝し、早くもリーグ優勝に王手をかけた。
最大5試合行われるプレーオフ決勝は、先に3勝したチームが優勝となるレギュレーションのため、名古屋はあと1勝で優勝が決まる。プレーオフ準決勝を含め、レグラーシーズンから15試合負けなしで勝ち進んできた立川だったが、王者・名古屋の前にその勢いを完璧に封じられた。プレーオフ出場のみならず、リーグ優勝経験を持ち、名古屋と立川の両チームでプレーした元日本代表・渡邉知晃が、この2試合を振り返る。
名古屋vs立川|2月24日(金)18:45 プレーオフ決勝 第3戦!
■この試合のハイライトはこちら(ABEMAビデオ)
鬼に金棒…本気の名古屋が強さを見せつける
プレーオフ決勝で、立川の躍進を期待した人は多かったのではないだろうか。僕自身もその一人だった。第3戦以降で、立川が躍進する可能性があることを前提に、駒沢行われた2試合を振り返りたい。
1月14日に立川のホーム・アリーナ立川立飛で行われた名古屋戦は、4-1で勝利した。その試合を含め、プレーオフ準決勝も勝利した立川は、15試合負けなしでプレーオフ決勝へと勝ち進んできた。
一方の名古屋は、立川戦の敗戦以外にも、12月25日のフウガドールすみだ戦でもホームで敗れるなど、4試合を残してリーグ1位を決めてからは、調子が上がっていないようにも見えた。
対照的な両者だったからこそ、立川の勢いが勝る可能性を見出した人が多かったはずだ。しかし、18日、19日に行われた試合は、強さを見せつけた名古屋が2連勝し、早くもリーグ優勝に王手をかけた。
名古屋vs立川|2月24日(金)18:45 プレーオフ決勝 第3戦!
名古屋は強かった。本気の名古屋は、本当に強かった。
早々にリーグ1位を決めたことによって、それ以降の名古屋はプレーオフ決勝に全ての照準を合わせていたのだ。リーグ戦の残り試合は、彼らにとって消化試合にすぎなかった。
プレーオフ決勝第1戦の生中継で、ABEMAの実況・福田悠さんが「名古屋はプレーオフが決まったあと、プレシーズンと同じくらい体を追い込んでいた」と話していた。
名古屋の選手は誰も言い訳をしなかったが、終盤戦は体がきつい状態で試合に臨んでいたのだ。負けてしまったとしても、プレーオフ決勝で最高のパフォーマンスを出すための準備に徹していたということだ。
大事なのはプレーオフ決勝で3勝し、優勝すること。
第1戦の立ち上がりから、名古屋はエンジン全開だった。プレスの強度、ボール支配率、シュートまで持っていく形、球際の強さ、全てにおいて立川を上回っていた。そのことは、2試合のスコアにも表れている。まったく隙のない名古屋の姿がそこにはあった。
フィジカルコンディションの充実は、試合終盤に顕著だった。名古屋は2試合ともほとんどの時間を2セット・8人で回していたが、疲労が溜まる第2ピリオドの終盤でもプレー強度が落ちることはなかった。シーズン中にも関わらず厳しいトレーニングを積んできた賜物だろう。
特筆すべきは、2試合で10得点を挙げたにもかかわらず、2試合連続得点を挙げた選手がいないことだ。つまり“日替わりヒーロー”が生まれていることも、名古屋の強みだ。
立川対策もしっかりと行われていた。キーマンであるドリブラーの日本代表・金澤空に対しては、1人目が抜かれてもすぐに次の選手が対応する、カバーリング守備の連携も抜群だった。立川が得意とするセットプレー時にも、自由にシュートを打たせなかった。
そしてもう一つ、触れるべきことがある。チームの一体感だ。むしろ立川の武器だと思っていたが、名古屋の一体感は見ている者にも伝わってくるほどだった。
キャプテンの篠田龍馬を筆頭に、今シーズン限りの現役引退を発表している西谷良介らベテラン選手が、”試合に出ていなくても”チームのために声を出して鼓舞し続けていた。
個人能力が高く、違いを作れる選手が何人もいる絶対王者・名古屋に一体感までもが備わってしまったら、鬼に金棒だ。2試合とも40分間、隙のない磐石の勝利だった。
「さすが」の一言、違いを見せた吉川智貴
僕は、この試合のキーマンに吉川智貴を挙げていたが、やはり間違ってはいなかった。特に、第1戦は圧巻だった。
1つ目のキーポイントになったプレーは、第1ピリオドに自陣左サイドのゴール前で、金澤をファウルで止めた場面だ。結果的にイエローカードを受けてしまったものの、必要なファウルだった。
名古屋vs立川|2月24日(金)18:45 プレーオフ決勝 第3戦!
このシーンは、平田ネト・アントニオ・マサノリの先制点が生まれた直後のキックオフからの流れだった。立川が攻撃を仕掛けてきたが、名古屋がボールを回収し、そのボールが吉川に渡った。
自陣の中央やや左でボールを持った吉川は、立川の酒井遼太郎と金澤の2人からプレスを受けた。少し孤立した形になり、巧みにボールキープしてなんとか繋ごうとしていたが、2人に囲まれたこともあり、金澤にボールを奪われてしまう。
このままいけば金澤がシュートを打てるチャンスシーンになるところだったが「危険」と判断した吉川は、警告覚悟で止めにいった。そうしなければ金澤のゴールが生まれていたかもしれないシーンだっただけに、好判断だ。結果的に立川のフリーキックを守り切り、失点を免れた。
名古屋の得点直後だったことからも、絶対に失点したくない時間帯である。事実、プレーオフ準決勝も、立川は浦安が得点した直後にすぐさまゴールを奪い返し、試合を振り出しに戻すと、勢いそのままに逆転勝利を収めていた。そうした経緯を踏まえても、吉川の選択は、試合の鍵を握るワンプレーだった。
もう一つは、名古屋が2-0でリードして迎えた残り5分半の場面だ。立川のパワープレー開始直後、新井裕生にゴールを許し、流れを奪われかけていた時だった。
立川のゴレイロ・黒本ギレルメが、流れの中からキャッチしたボールをそのまま運んで持ち上がると、味方にパスを出す。これを読んでいた吉川がカットし、そのままドリブルで運ぶと、黒本との1対1を制してゴールに流し込んだみせた。
1点差に迫った立川の「これからだ!」というメンタルに大きなダメージを与え、名古屋の勝利を近づける貴重なゴールだった。吉川の経験からくる読みと、タイミングを見計らった技術の高いシュートが試合を決めたのだ。
プレーオフ決勝という大舞台でしっかりと自分の役割を果たした吉川は、さすがの活躍だった。
立川が勝利するためには
プレーオフ決勝の駒沢ラウンドを2連勝で終えたことで、名古屋の優勝がかなり近づいたことは間違いない。名古屋のパフォーマンスとスコアを考えても、3連勝で決めてしまうと思っている人は多いだろう。ここまでの名古屋は、周到な準備もあり、隙が見当たらない。プレーオフの経験があるからこそ、選手やスタッフも3勝して優勝を決めるまでは、気を抜くことはないだろう。だだし、全てが終わったわけではない。
「試合はやってみなければわからない」とよく言われるように、下剋上はスポーツの醍醐味の一つだろう。
では、立川が勝つにはどうすればいいのか。
名古屋vs立川|2月24日(金)18:45 プレーオフ決勝 第3戦!
「こうしたら勝てる」という明確な戦術ややり方があるわけではない。今まで積み上げてきたチームのベースとなる戦い方を1週間で急に変えることはできない。
何度も言うが、今の名古屋には隙が見当たらない。
そんななかで立川が勝つためには、名古屋のペースを乱し、泥試合に持っていくことが必要だ。そのために第一に、失点をしないで時間を進めること。理想は、第1ピリオドをリードして終わりたいところだが、最低でも0-0で終えたい。
さらに言うと、試合終盤まで0-0の状態を保ちたい。駒沢では2試合ともに第1ピリオドに名古屋が先制点を取ってペースをつかんでいた。リーグ戦でもそうだったように、得点後にたたみ掛けて追加点を奪っていくやり方は、名古屋のストロングスタイルである。
そうさせないためにも、0-0もしくはリードした状態で終試合盤に向かい、名古屋の選手を少しでも焦らせることが必要だ。立川の強みは守備の強度にあるので、そこを十分に発揮していきたい。
立川は第1戦に比べて第2戦のほうがボールを保持する時間、シュートに持ち込む回数が増えたので、次の試合は数少ないチャンスを確実にゴールに繋げていきたい。
両試合とも、立川はパワープレーからゴールを奪えているので、試合の中で交えていく“秘策”もありかもしれない。その判断は比嘉リカルド監督次第だ。
当然、名古屋は次の試合で優勝を決めにくるだろう。名古屋の方々には申し訳ないが、フットサルを観る側の人間としては、少しでももつれてくれることを期待したい。手に汗握るハラハラした展開や、想像を超えるような熱戦を、純粋に見てみたいからだ。
立川は、プレーオフ決勝まで進んだチームとして、意地を見せられるか。2月24日の第3戦、立川の真価が問われる一戦となる。
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