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2022.03.31

改めて問う、しながわ敗戦の理由。涙の意味。白方秀和はあのピッチでなにを思い、散ったのか。

PHOTO BY高橋学

3月4日、5日、F1最下位のボアルース長野とF2優勝のしながわシティが、来シーズンのF1の座をかけて入替戦を戦った。結果は周知のとおり、長野が残留を果たした。

入替戦には、独特の雰囲気がある。もしかしたら、リーグ優勝がかかる試合より難しいものかもしれない。勝てばF1、負ければF2。チームの運命はもちろんのこと、選手個人の運命も決まる試合。プレッシャーは相当なものだろう。

しながわにとっては、2021年の入替戦は、クラブライセンス不公布により、試合直前で涙を飲むことになった。彼らにとっては、2年越しの思いを込めて臨んだ試合だった。

しかし──。

結果は2戦合計4-4。レギュレーションにより、長野に軍配。第2戦のタイムアップを迎えた瞬間、ピッチにはこれ以上ないほど鮮明に、明暗が描かれた。

しながわのキャプテン・白方秀和はその場に泣き崩れ、起き上がることができなかった。試合中継を通してそのシーンを目撃した誰もが、彼の悲痛な思いを共有するようだった。

「ああ、ここで終わりか」

昇格できなければ、引退も覚悟していた。「敗退」という現実を受け入れられず、試合を終えてしばらくしても、なかなか立ち直ることができなかったという。試合映像を振り返ることすらできないまま10日以上が過ぎていた。

「今でも、『長野』という言葉や赤いユニフォームを見ると、感情が込み上げてしまう」

行く場のない感情と思いを抱えた彼に僕は、取材を申し込んだ。オファーから1週間が過ぎ、失意で臨んだ全日本選手権で敗れた翌週、ようやくオンラインで対面する機会を得た。

白方が流した涙の意味とはなにか。彼は噛み締めるように語り始めた。

※インタビューは3月17日に実施した

インタビュー・編集=渡邉知晃

一人になると試合を思い出して涙が出た

──今日はいろいろと話を聞かせてもらえたらと。傷口に塩を塗ることになるかもしれないけど……。

はは、だいぶ傷は癒えましたけどね(苦笑)。

──入替戦が終わって10日以上が経ったけど、今の心境はどう?

試合直後からするとメンタル的には回復しましたけど、まだ振り返ったり、映像を見たりする勇気がわかないです。パワープレーのときにどうしてもっとこうしなかったんだろうとか、思い出したくなくて……。なんて言うんですかね。わざと遠ざかっているというか、振り返らないようにしています。そのおかげでメンタルはだいぶ落ち着きました。

──試合終了直後にうずくまって涙しているシーンがABEMAの中継でも映し出されていたし、記者会見の記事も話題になったよね。試合後のロッカーはどんな感じだった?

みんな同じでしたね。泣いていたり、ロッカールームにいなくても通路とかでうずくまっていたり、そんな選手ばかりでした。僕も同じで、周りを見る余裕はなかったです。

──ロッカーでは、監督やシラが締めの言葉を話したの?

岡山孝介監督とオーナー、GMが一言ずつしゃべって締めました。正直、覚えていません。今、振り返っても思い出せなくて……。たしか、「やってきたことが実らなかったけど、これまでハードワークして全力で取り組んだ結果だから」というような話だったと思います。「なにやってるんだ!」みたいな話はなかったです。みんな、頭が回っていなかったと思います。

──キャプテンとしては話してない?

なにを言っていいかわからなくて。岡山さんが話した後に、選手で言いたいことがある人はいるかって聞かれたんですが、なにも言えなかったですね。

──すぐに全日本選手権があったわけだけど、切り替えて練習できた?

入替戦が終わってから3連休があって、水曜日から練習でした。この3連休はきつかったですね。当然、選手権に向けて少しは体を動かしておくべきですけど、そんな気持ちにもなれなくて。家族と一緒にいるときは忘れられますけど、一人になる時間があると試合を思い出して涙が出ました。

──選手権はみんなも完全に切り替えられてはいなかった?

そうだと思います。コンディション的にもしっかり追い込めないというか。水曜の練習も、みんな体が動かないと言っていました。気持ちは入っていこうとするけど、体が置いていかれる感覚。ダメージを受けていましたね。でも、僕もみんなもフットサルが好きなので、練習中は楽しいというか、「フットサルいいな」っていうことは感じましたね。

──そのメンタル状態で臨んだ選手権、さすがに名古屋に勝つのは難しかった。

すみだには勝てましたけど、体が動かなくて、めちゃくちゃでした。でも結果はついてきたので、これでも勝てるんだ、と。入替戦のときのような気持ちの入り方ではなかったのに勝てたことに、不思議な感覚でした。でも、すみだが最後にパワープレーをしてきたときは、トラウマというか、恐怖心がありましたね。名古屋戦は、チャンスは少なからずありましたけど相手のほうが地力がありますから、最後のフィニッシュのところが勝負を分けたと思います。でもやっぱり、強い相手と試合をするのはすごく楽しいなと思いました。

長野戦の敗因は「3点目を取れなかったこと」

──改めて、F1に上がれなかった敗因はどこにあると思う?

やはり、第2戦で2-0までいったときに「3点目を取れなかったこと」が結果的に勝負を分けたかなと。第1戦は最後にひっくり返したので、あれ以上ない勝ち方だったと思います。2戦目も試合の入りはうまくいっていなかったけど、2-0までいけたのは出来過ぎだなと感じていました。第2ピリオド開始からパワープレーを受けましたが、パワープレー返しを狙える場面はほぼありませんでした。それでも流れのなかでチャンスはありましたし、3点目を取れていたら決められていたと思います。その1点が勝負を分けた。リーグ戦でも、チームとして得点力に課題があったので、それが最後に響いたのかなと。

──パワープレーのディフェンスよりも3点目の部分。

長野のパワープレーはワイドを使ったり、サイドから狙ってきたりしましたけど、特別な形ではありませんでした。僕らのディフェンスのシステムは「ダイヤ」と「2-2」があり、守れていた感覚はあったなかで一瞬の隙を突かれてしまいました。そういう意味でも、やはり3点目を取ることでメンタル的にこちらが優位に立てただろうと思いましたね。

──2-0と先行したことで、チーム的に「いける」という雰囲気になったとか、守りに入ってしまったとか、そういうことはなかった?

ハーフタイムのロッカーではみんな「まだ終わっていない」「先に点を取られたらきついぞ」と話していたので慢心はありませんでした。パワープレーの守備の確認もしていましたし、2-0という状況が敗戦につながったとは思えない。難しいですね。なんですかね……。

──初戦はいい形で逆転勝利したことで「いけるぞ」とかは?

うーん、初戦もぎりぎりでしたからね。だからこれでいけるとかはなかったですね。

──第1戦に勝ったことで、2戦目は引き分けでも昇格できる状況だった。第2戦で2-2に追いつかれたときに、そこからの戦い方はチームとして統一できていた?

ちょっとやばいなというかむしろ、「かなりやばいな」という雰囲気を感じていました。点を取りにいくか、守りきるかは、もしかするとバラバラだったかもしれないですね。チームとして特に決めていませんでした。

──そこの意思統一はかなり大事だと思う。パワープレーの守り方にもつながるし。

そうですね。1点決められて2-1となり、守り方を2-2のボックスに変えました。プレスをかけにいってパワープレー返しを狙う意図ですね。でも、長野が普段やっていた形と少し違っていたところもあって。相手はヨネ(米村尚也)が最後尾に入っていましたけど、かなり低い位置にいたので、プレスをかけて取りにいくのは難しいと思っていました。それで、中途半端になったところを左足でセグンドに通されて失点。あれは痛かったですね。その後、2-2で守るか、いつも通りダイヤで守るか、どっちでいくか話してダイヤに戻してからもう1点入れられました。どちらの守り方からも失点してしまったのは痛かったですね。

──もしかしたら、普通とは全くプレッシャーのかかり方が違う試合に際して、チームとしての若さが出たのかもしれないね。代表を含めて経験のある選手がシラ、ゆうすけ(中村友亮)、ダニ(ダニエル・サカイ)、ボラと少なかったことも影響したのかもしれない。

そうですね。足りなかったと思います。自分も、自分のことで精いっぱいで、余裕を持って接してあげられなかった。若い選手が力を出すのは難しい状況だったと思います。

もう1回やりたい気持ちが生まれてきた

──シラの流した涙には、どんな理由があった?

記者会見でも話しましたけど、過信とかではなく、「絶対いける」と思っていました。日頃の練習からの取り組みもそうですし、2年間ずっと同じメンバーでやってきて、F2とF1というカテゴリーの違いはありながらも、チームとしての成長を感じていました。自分たちがやってきたことを出し切ることで、勝てないわけがないと。あの入替戦にすべてをかけていて、負けたら引退する気持ちでやっていました。結果的に負けてしまい、「ああ、ここで終わりか」って。これだけやってきても負けるのか、と。

──虚しさがあった。

そうですね。正直、やれることは全部やってきたので、これ以上なにができるだろうという感覚でした。長野の練習を見たことはないですけど、負け続けて最下位にいたチームですし、練習からモチベーションを高めていくのは簡単ではありません。積み重ねは僕たちのほうが大きいという自信もあった。それでもかなわないという虚しさ……変な感じですね。

──記者会見では、「神様がいるなら絶対、僕らは昇格できると思っていた」と話していたよね。

はい。本当に日々の取り組みから全員が手を抜くことなくやってきたので、神様が見てくれていたら絶対に僕たちを勝たせてくれると思っていました。自信があったんですけどね。

──ストレートに聞くけど、来シーズンはやらないの?

入替戦の後は、「終わったなあ」と思いました。結果が出なかったし、チームからお疲れ様と言われたら、「ありがとうございました」と言って終えることになるのかなと。でも、「もう1回やってくれないか」と言われたら、頑張りたいと思っています。他のチームに行ってまで続けるということは正直、考えていません。

──今年、チームを昇格に導けなかったらやめる覚悟だった。

年齢的にもそうですし、いい環境でやらせてもらっているので。去年も同じ覚悟でしたけど、ライセンスの問題で入替戦ができませんでした。そういうなかでやめてしまうことに納得できなくて、今年にかけていましたからね。

──でも今は、もう1回頑張ってくれと言われたら、やると。

やっぱり、こんな悔しい思いをしたまま終わりたくないですね。このメンバーでF1に行きたい思いもあります。入替戦が終わったときはなにも考えられなかったけど、選手権前に練習したときは、みんなとボールを蹴るのが楽しかったです。みんなともう1回やりたい気持ちが生まれてきました。でもそれは自分が決めることではなく、チームがどう判断するかですね。F1に導けなかったことは自分の力不足だったと感じています。

フットサル界を停滞させてしまった

──もしあの試合に戻れるなら、キャプテンとしてなにができただろう?

僕はたくさん話すタイプではないので、自分が練習から100パーセントで取り組んで、その姿を見てもらうことで引っ張っていこうと思っていました。だから入替戦に戻れたとしたら……うーん。難しいですね。

──後悔したこととか。

もう少し、若い選手に対して声がけをしてもよかったと思っています。第2戦はパワープレーを長い時間受けていたので若い選手はあまり出ていないですけど、第1戦は出ていましたからね。そこでは自分の力を出し切れていないように感じたので、少しケアできたらよかったかなと。あとは、僕自身かなりチャンスがあったので、そこで点を決めていたら。プレースタイルは、トモさんみたいに点を取る選手じゃないですが。セットプレーでもシュートを打てるポジションを任されていましたし、流れのなかでも取れたらよかったですね。

──話を聞いていると、その「1点」が大きかったんだと感じる。

そうですね。第1戦でボレーを決められたのはよかったですけど、ゴレイロとの1対1もありましたし、他にもチャンスがあっただけにそこで決めていたらと……。

──この試合は、シラの競技人生でもすごく印象的だったんじゃない?

はい、一番深く残る試合になりました。選手権も長野の選手を会場で見ましたけど、なんていうか、あのユニフォームを見ると「ああーっ」となりました(苦笑)。それくらい悔しいです。

──他に言い残したことはない?

そうですね……。僕らがF1に行けなかったことは「フットサル界を停滞させてしまった」なと。しながわは名古屋に対抗できると思っていたので。他のチームと比べて、財力や環境が整っているチームが入ることでリーグの活性化につながりますし、いい影響を与えて他のチームが変わるきっかけになると思うし、お客さんも楽しんでくれると思います。そういう機会を逃したことが残念だったと感じています。

──フットサル界的にも。

はい。もしかしたら若い選手など、しながわに入れたらいい環境でフットサルができると、光を感じる選手がいたかもしれない。若くして引退している選手も多いなかで、それが変わるかもしれないし、そういう環境でやりたい選手はいっぱいいると思うので。

──シラ、意外としゃべるね(笑)。

こうして思い出すと、意外といろいろな思いがわいてきますね(苦笑)。

──まだ切り替えられていないのは声のテンションで感じるけど。

はい、思い出すとどうしても。涙が出そうになることはもうないですけど、今でも整理できていないですからね……。この先どうするかはまだわかりませんが、こうして話す機会をいただけてよかったです。トモさん、今日はありがとうございました。

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