更新日時:2021.10.06
ブルーノ・ジャパンは強かったのか?W杯で見えた日本代表の現在地|渡邉知晃・総括コラム
PHOTO BYFIFA/Getty Images
日本代表は、FIFAフットサルワールドカップ リトアニア2021をベスト16で終えた。W杯2012年大会で達成した過去最高成績に並んだが、果たして日本のレベルは上がっているのか。世界との差は縮まったのか。今大会の戦いぶりから紐解いていく。
日本がベスト16の壁を越えるために必要な攻撃の課題
日本は、アンゴラ、スペイン、パラグアイ、ブラジルと戦って1勝3敗。
大会前の世界ランキングは、アンゴラ(46位)だけが日本(15位)より下で、スペイン(1位)、パラグアイ(10位)、ブラジル(2位)、と圧倒的な上位国。とはいえ、世界トップ2の相手にはいずれも2-4と僅差での敗戦。さらに互角に近い試合内容だった。
国際親善試合を含め、スペインやブラジルとの過去の対戦は大敗することも多かった。そこからすると、W杯という“本気の戦い”で両者を苦しめたという事実は評価できるだろう。試合結果、内容的に、強国相手と互角に渡り合えるまでに成長したことを示した。
では、なぜ日本は強国相手に互角の戦いができたのか。
ポイントは「ディフェンス」だ。日本のストロングポイントである、強度が高く、整備された前からのディフェンスが対戦国を苦しめたのは、各試合を振り返っても明らかだった。日本人の特性、そして個人のフィジカルではどうしても強国と差が出てしまうことを考えたときに、強度の高い前からのプレッシングというディフェンスシステムは、日本の武器となることが証明された。
簡単に自陣まで押し込まれてしまうと、そこからサイドでの1対1や強力なピヴォを使った攻撃、反転などフィニッシュにつながるプレー、得点につながるプレーをされてしまう危険性が高まる。ようするに、自陣ゴール近くで個の能力を生かしたプレーをされやすくなってしまうのだ。
しかし、前から積極的なプレッシングをかけることで相手に自由を与えず、簡単に自陣に押し込まれないために、ピンチを減らすことになる。この先「日本といえば強度の高いディフェンス」と言われるような日本のスタイルが確立していくかもしれない。
一方で、攻撃面ではまだまだ向上していく必要がある。
ブルーノ・ガルシア監督が大会前から強調したように、セットプレーは1つの武器となっていた。セットプレーで得点を挙げることは、フットサルの試合で勝利するために非常に重要な要素だ。事実、大会最上級の攻撃力を誇ったあのブラジルでさえも、準々決勝・モロッコ戦はフリーキックからの1点のみで勝利をつかんだほどだ。日本においても、セットプレーは今後も武器として継続して強化していきたいところだ。
その反面、個人の能力で得点を奪うこと、定位置攻撃から得点を決めることは、レベルアップが急務である。
強国には必ず、個の力でゴールをこじ開けることのできる選手がいる。苦しいときに、チームを救うゴールを決めてくれる選手がいる。ブラジル戦で日本がゴールを許したフェラオ、レオジーニョ、ピトなどはまさにそうした選手だ。個の力、あるいは決定力は、ベスト16の壁を超えていくために必要不可欠な要素であり、強化していくべきポイントであることは間違いない。
もう1点、攻撃面でフォーカスしたいのは、ミドルレンジからのシュートだ。
日本の試合と、その他の国の試合を見て感じた圧倒的な違いは、10〜12メートル付近からのシュート数と威力だ。特に南米や欧州各国は、その距離からのシュートを積極的に打つことを徹底し、なおかつ威力もあり、多くのゴールを挙げた。ミドルレンジからシュートを打てることで、ディフェンスはシュートを警戒するエリアが広がるため、その他の攻撃をさらに効果的に活用できるのだ。シュートレンジを広げていくこと、そうしたフィニッシュを放てる選手を育成・強化していくことも必要な要素である。
最後に、ゴレイロを使ったプレス回避や攻撃も、日本の武器の1つに加えておくといいだろう。
ベスト4に残った4チーム中、ブラジル、カザフスタンはゴレイロを使った戦術を重宝した。すべての時間でゴレイロを使った戦術を扱う必要はないが、オプションの1つとして持っておくことは大きなメリットになる。特に、プレス回避がうまくいかないとき、攻撃時のアクセントとして活用することで、相手ディフェンスを撹乱できる。数的優位を生かして得点チャンスをつくれることは大きなアドバンテージになる。もちろん、ミスした場合に失点につながりやすいというリスクはあるものの、トレーニングで精度を高めることで、日本の武器にできる可能性はある。
日本フットサルには、トップリーグがある。Fリーグの発足から15年目を迎えた。その過程で、日本代表のレベルは確実に上がった。ミゲル・ロドリゴ前監督(2009〜2016)からブルーノ・ガルシア監督(2016〜)へと引き継がれてきた流れで、強国・スペインの最先端の指導に基づく強化の道を歩んできた。2016年のW杯出場を逃す“失態”をはさみながらも、2012年、2021年と2度のW杯ベスト16を果たした。
もはや、グループステージ突破は絶対条件であり、今後はベスト8以上が明確な目標となる。
では、日本がもう1段階レベルアップしていくために、なにが必要なのか。それについて、ブラジルに敗退後、星翔太が明確なメッセージを残した。「フットサルに関わるすべての人が、当事者意識を持って行動しなければならない」、と。
日本は確実に強くなった。だが、世界は1歩も2歩も先を進んでいる。我々はまだ「世界の16強」でしかないのだ。
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