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さよならはグータッチで。大好きなガリンシャを見送る、最初で最後のインタビュー|俺たちの全日本

PHOTO BY高橋学

待ちに待った取材の制限時間は2分…

全日本フットサル選手権準々決勝、浦安は1-5で敗れた。皮肉にも、相手はガリンシャの古巣であるフウガドールすみだである。文字通りの完敗だった。

「ガリンシャにインタビューする?」

試合が終わり、本田氏がわたしに声をかける。

話を聞きたい気持ちはやまやまだったが、この内容の試合の後、しかも通訳が必要なブラジル選手に一体なにを聞けばいいのか、うまく質問できる自信がまるでなかった。

それでも意を決してミックスゾーン(取材エリア)に向かい、ガリンシャを待ち続けた。取材する選手は、日本サッカー協会の広報担当者にリクエストして呼んでもらうスタイルだ。たいてい、勝ったチームの選手や監督が先に取材に応じる。なぜなら、勝ったチームは翌日も試合があるということと、逆に、負けたチームはシーズン最後の締めの言葉が長くなることが往々にしてあるからだ。浦安はロッカールームでシーズン最後のミーティングをしていた。

待って、待って、何度も確認をして、会場の退館時間の5分前になって、ようやく通訳をしてくれたディドゥダと一緒に、堅い表情で彼はやって来た。

本当は笑顔が見たかったけれど、ぜいたくを言っていられない。広報担当者から「2分でお願いします」と言われた。1時間くらい待ったのに、用意された時間のあまりの短さに、ちょっとだけ泣きそうになった。

 

──まずはこの試合を振り返って。

本当に、こういう試合の流れにはしたくなかったです。今日負けて、こういう形でシーズンを終えることになってしまい、すごく悲しいです。ただ、胸を張って、頭を上げて次のシーズンも頑張るしかないです。すみだの選手にはおめでとうと伝えたいし、次の試合も頑張ってほしいと思います。

──昨シーズンはゴール数が伸び悩みましたが、今シーズンは調子が戻ったように思います。なにか変化がありましたか?

1年目は、浦安のやり方の理解や、慣れることに時間がかかって難しいシーズンでした。ただ今年は、ようやく慣れて結果を出すことができました。優勝はできませんでしたがチームもプレーオフまで進んで、トップ3に入りました。今年で退団になりますが、いいイメージを持っていられることはすごくうれしいです。

ここまで聞いて、本当はリーグ終盤、少し苦しんだことについても聞きたかったけれど、広報担当者に「次で最後の質問にしてください」と言われてしまった。この時点ですでに2分近く経っていたから仕方ない。

──話せる範囲で退団の理由と、日本に来て良かったと思うことを教えてください。

退団については家族と話をして、家族の気持ちを一番に考えた結果、日本を離れるという決断にいたりました。ブラジル人はとにかくアツいという特徴がありますが、日本の選手は本当に落ち着いていて、文化も含めてすごく勉強になりました。その心は最後まで大切にしていきたいと思います。

 

2つの質問をくっつけるという小細工をして、あっという間にインタビューは終わってしまった。もっと他に聞くべきことはたくさんあったかもしれない。でも、これが今のわたしの精一杯だった。

話を聞く限りでは、どうやらブラジルで選手を続けてくれそうだ。競技を続けさえしてくれれば、またいつか日本でプレーしてくれる日が来るかもしれないし、行こうと思えば現地にも会いに行ける。

最後はさよならの代わりにグータッチをして、会場を去る背中を見送った。

ありがとう、ガリンシャ。
ありがとう、週末のヒーロー。

いつの日か、一人前の記者になって、再会できる日を願って。

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